Tigh Mhíchíl

詩 音楽 アイルランド

記事一覧

レプラコーンとの夏——静修生活転じて異界の修行となる

Tanis Helliwell, Summer with the Leprechauns: the Authorized Edition (Wayshower Enterprises, 2012) 驚異の書だ。このレベルの接触をした人物はルドルフ・シュタイナー以来かもしれない。つまり、百年ぶり。といっても、あくまで人間の時間の尺度によれ…

手がかりの書——アイルランドの聖地探訪案内

Jeanne Crane, Visiting the Thin Places of Celtic Ireland (2013) この書には感謝しかない。客観的に見れば、素人同然の著者が書いた旅行案内ともつかぬ旅行記ともつかぬ小冊子といえる。しかし、その著者が熱烈な愛情を注ぎ、猛烈に読書し、探究心いっぱ…

ボブ・ディランの最新歌集(百歌選)を手に取ろう

Bob Dylan, 100 Songs (Simon & Schuster, 2017) 意外なことにボブ・ディランの手頃な詩集がなかった。2016年のノーベル文学賞受賞以来、世界中の大学で少しづつディランが教えられ始めているけれども、適当なサイズの詩集がなかった。このほど出た、この百…

特撮マニアの記憶に残るヒーローを捜し出す! 敏腕編集者の物語

月村了衛『追想の探偵』(双葉社、2017) 月村了衛の幅の広さを思い知らされる作品。面白かった。「機龍警察」シリーズの読者なら、著者がメカやSFに詳しいことはよく知っているけれど、ファン層のマニアック度が半端でない、特撮物に焦点をしぼった作品を書く…

危機意識を覚醒させる契機

青山繁晴『危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実』(扶桑社、2017) 『ぼくらの真実』にあとがきの形で大幅に加筆した新書版。冒頭のカラー写真多数およびあとがきが充実している。ただ、核になる部分はやはり『ぼくらの真実』にあると思われる。本文に…

読者と共に定年後を考える楽しい本

西和彦『定年後の暮らしの処方箋』(幻冬舎、2017) 著者「西和彦」のことを、あのアスキーの西和彦氏と勘違いして手に取った。読んでみて別人と判明。NPO法人住環境ネット理事の西和彦氏であり、建築物の商品企画・市場開発に従事してきた人物だった。著者は…

ボブ・ディランの人生をよぎった謎の人物

Life 'Bob Dylan' (2016) ハードカバー版(2012)をボブ・ディランのノーベル文学賞受賞を機に関連する序文をくわえ電子書籍化したもの。元のハードカバーは96ページで、この長さなら、内容がおもしろいこともあり、じゅうぶん読み切れる。Life 誌の編集者た…

ボブ・ディランの 'Blowin' in the Wind' をめぐる横尾忠則と鴻巣友季子の対談

「すばる」2017年8月号 横尾忠則+鴻巣友季子「宇宙的広がりを読み解く——ボブ・ディランの詩(うた)の魅力」25ページにわたる対談。題材はボブ・ディランの 'Blowin' in the Wind'.横尾はディランと意外な関係がある。1984年か85年に、ジャケットをデザイン…

ブータン人の目を通して見る現代日本の姿

伊坂 幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂 幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』を読むよう勧められた。ボブ・ディランの歌が出てくるからだ。読んでみると、怒りがこみ上げてくる。読むように言われたことに対してではない。小説に描かれた暴力にだ…

mythopoeiaとしてのSF

アーサー・C・クラーク『地球幼年期の終わり【新版】』 (創元SF文庫、2017) アーサー・C・クラーク(1917-2008、英国のSF作家)の生誕百年にあたり、今やSFの古典の名を不動のものにしている『地球幼年期の終わり』が新版として、東京創元社から創元SF文庫の…

祈りの力と病気について霊的成長の観点から論じる

花咲 てるみ『なぜ祈りの力で病気が消えるのか いま明かされる想いのかがく』(明窓出版、2017) 本書は祈りの力でなぜ病気が消えるのかをテーマにしている。しかし、議論は祈りから始まらず、生れ変わりから始まる。転生を前提として、心に二つあること、体に…

発光しそうな短篇

森鷗外「花子」 発光しそうな短篇 森鴎外の短篇「花子」を読む。短篇の名手として有名だが、それだけでなく、散文詩のような味わいがある。ロダンの為事場の描写。〈或る別様の生活がこの間を領している。それは声の無い生活である。声は無いが、強烈な、錬…

過労死の科学的判定をめぐるミステリ

松岡圭祐『水鏡推理6 クロノスタシス』(講談社、2017) 過労死の科学的判定をめぐるミステリ 省庁における過労死事例の多発などを受け、過労死を客観的に判定する「バイオマーカー」が提唱された。その危険値を超えた者は過労死の危険ありとして休養が命じら…

栞子をめぐる人間関係が着地点を迎えるのか。シェークスピアを補助線とする波乱の物語

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』 (メディアワークス文庫, 2017) ビブリア古書堂シリーズの完結篇。ついに主人公・栞子をめぐる人間関係が一応の着地点を迎えることになるのか。本当にこれで終わりだと思ったら、作者あとがき…

秘密を持った子供は時として「無邪気な子供」を演ずる必要がある

森奈津子『語る石』(e-NOVELS, 2017) 森奈津子の短篇小説「語る石」(e-NOVELS)は幼い子が父の机の上にふしぎな石を見つけるところから始まる。 その石は子供である麻衣子に様々なことを語り聞かせる。その中で、心に最も強く残ったのは、「人間の肉体と魂…

濃密な幻想世界を描く短篇

皆川博子『雪花散らんせ』 著者65歳の時の作品。『あの紫は ― わらべ唄幻想』(1994)に収録。2017年になって e-NOVELS から発行された。e-NOVELS は1999年に始まった、プロの作家集団によるオンライン販売。最近、Kindle にも入ってきたようだ。1999年当時…

レ・ファニュの意外な一面を表す表題作

J・S・レ・ファニュ『ドラゴン・ヴォランの部屋』(創元推理文庫、2017) レ・ファニュ『ドラゴン・ヴォランの部屋』 アイルランドの作家シェリダン・レ・ファニュ(1814-73)の日本における作品集の第2弾。第1弾『吸血鬼カーミラ』(平井呈一訳、1970)から47…

平成という元号の知られざる成立史

青山繁晴『平成紀』(幻冬舎、2016) 青山繁晴『平成紀』 読み終わった後もその本の世界がしっかりと残る書物がある。この本はそういう書物だ。小説だけれど、小説ではない。平成という元号がどうやって決まったかをかぎりなく真相に近くまで描く点ではノンフ…

山田正紀のデビュー作。言語学・神学にからむSF

山田正紀『神狩り』(KADOKAWA / 角川書店、2002) 山田正紀『神狩り』 山田正紀のデビュー作(1974)。第6回星雲賞日本短編部門を受賞している。発表後30年を経て続編『神狩り2 リッパー』(2005)が発表されている。表題通り、神を狩ろうとする無謀な企てを…

孝元の知られざる過去とユウキを結ぶ謎

葉山透『0能者ミナト〈10〉』(KADOKAWA、2016) 「0能者」シリーズ第10巻。今回も長編だ。主役は高校生時代の荒田孝元(総本山の法力僧)と、現在の赤羽ユウキ(小学生でありながら強い法力の持ち主)。いつもは主人公の九条湊(霊能力ゼロでありながら科学…

イーグルトンのポストモダニズム論の問題点を抽出する

風呂本武敏『華開く英国モダニズム・ポエトリ』(溪水社、2016) 題に「英国」とついているが実際にはアイルランドとスコットランドを含む。それらのモダニズム詩についての評論集(ラーキン、パウンド、イェイツ、エリオット、ロレンス、オーデン、マクダー…

Qシリーズの完結編で莉子はクリティカル・シンキングに向かう松岡圭祐『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉』

松岡圭祐『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉』(講談社、2016) 万能鑑定士の凜田莉子を主人公とするQシリーズの完結編。ストーリーとしては『探偵の鑑定 I・II』から続く。本書は関連シリーズのオールスター・キャストの観を呈する。これまでQシリーズ…

「太陽の塔」を鑑定する

松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿XII』(角川書店、2011) 「万能鑑定士」シリーズの第12作(2011)。事件簿の最終巻。大阪が舞台。一つの区切りなので整理しておくと、本書の最後に「万能鑑定士Qの推理劇で、凛田莉子とまたお会いしましょう!」と書かれてい…

同じ思考法を使う兄弟子と対決する

松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿)XI』(角川書店、2011) 「万能鑑定士」シリーズの第11作。京都が舞台。有名な神社仏閣が多い京都で単立の貧乏寺を再興する青年、水無施瞬は東京でイタリアン・レストランを成功させた経験があるが、僧侶としての経験は全く…

有機的自問自答と無機的検証という二段階の論理による問題解決法を駆使して真相に近づく

松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿X』(角川書店、2011) 「万能鑑定士」凛田莉子を主人公とするシリーズの第10作。時系列としてモナ・リザの謎を扱う『万能鑑定士Qの事件簿 IX』に続くが、物語の中心は『万能鑑定士Qの事件簿 II』の続篇。20歳の莉子がからむ…

ふたつの「核融合」とは

松岡圭祐『水鏡推理5 ニュークリアフュージョン』(講談社、2016) 科学の不正研究をテーマとする「水鏡推理」シリーズの第5作。今回のテーマは「核融合」。日本語の「核融合」という言葉には二つの意味があることを最後まで読んだひとは実感することだろう…

詩的な神学的探偵小説

G・K・チェスタトン『詩人と狂人たち (ガブリエル・ゲイルの生涯の逸話)』【新訳版】 (創元推理文庫、2016) 控えめに言っても他に類を見ない作品だ。詩人にして画家の主人公が狂人たちが引起こす事件を解決するか未然に防止する話が8篇収められている。 なぜ…

「モナ・リザ」の鑑定に必要なものは

松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿IX』(角川書店、2011) 「モナ・リザ」の鑑定をめぐるミステリ。主人公の鑑定士、凜田莉子にルーヴル美術館から「モナ・リザ」の真贋を鑑定する学芸員の登用試験を受けるよう誘いがある。日本での「モナ・リザ」展において万…

「詩人ボブ・ディラン」特集号

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 10/25 号 [ボブ・ディランの真価] 「詩人ボブ・ディラン」特集号(2016年10月18日発売)。ディランのノーベル文学賞受賞が発表されたのが2016年10月13日。1週間足らずでまとめたにしては充実した内容だ。買う価値…

海水淡水化の画期的テクノロジーの謎

松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿VIII』(角川書店、2011) 舞台は台湾。万能鑑定士の凜田莉子は故郷の波照間島の水問題に長年こころを砕いている。そんなところへ突然「同島の生活用水供給につきまして問題解決のめどが立ちました故、ご報告させていただきま…