ミナミAアシュタール『新・日本列島から日本人が消える日(下巻)』(破・常識屋出版、2020 〈ここからが本題〉と、エピローグで宣言され、ドキッとする。幕末から現代までの歴史を、戦争のくわしい経過などをまじえて語ったあとである。読者はお腹いっぱいに…
ミナミAアシュタール『新・日本列島から日本人が消える日(上巻)』(破・常識屋出版、2020) 相当に変わった本だ。読者をえらぶ本でもある。あなたがこの書評を読んでいることも、偶然ではないかもしれない。上巻を読みおわって言えることは、これまでの常識…
日本国史学会、田中英道「日本国史学第14号」(啓文社書房、2019) 日本国史学会の学会誌「日本国史学」第14号に掲載の田中英道の論文「ユダヤ人埴輪をどう理解するか」について。本論文を元にして、秦氏研究の構想を加え、口述体でまとめた書が『発見! ユ…
歴史ミステリー小説と銘打たれているが果たしてそうなのか。『ダ・ヴィンチ・コード』によく似て〈正史〉的な本では決して語られることのないような内容を大量に含んでいる。それをフィクションの形をとり書いた印象
伊勢谷 武『アマテラスの暗号』(2019)[2020年の改訂版でなく、旧版] 歴史ミステリー小説、あるいは歴史ミステリー・エンターテインメントと銘打たれている。果たしてそうなのか。本書を読んだ人は誰でもそう疑問に思うだろう。日本という国に隠された謎…
田中英道『発見! ユダヤ人埴輪の謎を解く 』(勉誠出版、2019) 「日本国史学」14号(2019)に掲載された論文「ユダヤ人埴輪をどう理解するか」を元にして、秦氏研究の構想を加え、口述体でまとめた書。まとめる段階で勉誠出版の編集が加わっていると思われる…
上橋 菜穂子『鹿の王 水底の橋』(KADOKAWA, 2019) 2015年に本屋大賞を受賞した『鹿の王』の続編。だが、ヴァンとユナのその後の話ではない。ホッサルとミラルの話だ。また、オタワル医術と清心教医術の話ともいえる。清心教医術は現代の医療に喩えるとどん…
西村佑子『不思議な薬草箱 魔女・グリム・伝説・聖書』(山と渓谷社、2014) 本書は魔女にまつわる薬草、聖書にからむ薬草をとりあげ、どんな草なのかに迫った本。軽い気持ちで読み始めたのだが、読むうちにどんどん引き込まれて行った。なんの気負いもてら…
福岡伸一『フェルメール 隠された次元』(木楽舎、2019) 17世紀のオランダの画家フェルメールの「稽古の中断」という絵に描かれた楽譜が本物の楽譜ではないか。だとすれば、この絵から、音楽が聞こえてくるのではないか。そう思った生物学者の著者が探求を…
藤井太洋『公正的戦闘規範』(早川書房、2017) 著者初の短篇集。どの短篇にも藤井太洋の世界観がしっかり刻まれ、物語の世界を読者も共有することができる。収められた短篇は次の通り(括弧内は初出)。1. コラボレーション(SFマガジン、2013)2. 常夏の夜(『…
Robert Galbraith, Lethal White (2018) 600ページを超える大作。プロットは複雑。英国の国務大臣の謎の死をめぐり、多数の人脈がからみ、ストライクとロビンによる捜査が進展する。通常、ミステリの最後の方では謎解きがあり、ペースが落ちるものだが、本作…
Ann Cleeves, Cold Earth (2016) このシリーズを読み終えるといつも虚脱感に襲われる。作品世界からお別れしなければならないからだ。今回もたっぷりシェトランドのミステリに浸かった。風や雨や冷気が伝わってくるような筆致には、毎度のことながら、ぞくぞ…
キム・チュイ『小川』(彩流社、2012) キム・チュイ『小川』 ベトナム系カナダ人の自伝的小説。アジア系の北米の作家は多数存在する。その中に、本書のような女性の作家も少なくない。だが、本書のような味わいをもった作品はめずらしい。その点がおそらく…
折口信夫『日本文学の発生』 折口信夫の文学論のうち、日本文学の発生にかかわる根本問題を、次の3種の文献を引きつつ考察したもの。・播磨風土記・神武紀・神代紀もちろん、すべて漢文で引用されている。まず、前提として、日本の国土に対して、他界が想定…
リービ英雄『英語でよむ万葉集』 リービ氏の万葉集関連の著書では最も親しみやすい書。〈約50首の対訳それぞれに作家独自のエッセイを付す,「世界文学としての万葉集」〉を語った本。リービ氏の言わんとするところを最もよく伝えるのは、おそらく、この書で…
「週刊ニューズウィーク日本版」〈特集:テロ時代の海外旅行〉(2018年5月1日・8日合併号) 特集は「テロ時代の海外旅行」。ありそうでなかった特集だ。次のような構成。・海外旅行はリスクになったのか・「危なくない」国 丸分かりマップ・あの観光地は大丈夫…
J, K. Rowling, Harry Potter and the Cursed Child - Parts One and Two (Special Rehearsal Edition): The Official Script Book of the Original West End Production (Little Brown, 2016) Rowling, Cursed Child 本物語で重要なハリ・ポタ(Harry Potte…
『劇場』 又吉直樹 又吉直樹『劇場』 期待を裏切られることはない。作者の文章はますます磨きがかかり、演劇論を通して語られる感性のきらめきは本書の随所に見られる。前作と合わせて、広く芸術論としても読めるし、クリエータを目指す人が読んでもきっと得…
『Man’yo Luster―万葉集』 リービ英雄 Levy Hideo- Man'yo Luster 美しい本である。万葉集の抜粋とその英訳(リービ英雄)、イメジ写真(井上博道)から構成された大型本だ。全380頁。歌の読み下し文および口訳は中西進『万葉集 全訳注 原文付』に拠る。この本を…
ポンド氏の逆説【新訳版】 (創元推理文庫) G・K・チェスタトン G. K. Chesterton - The Paradoxes of Mr Pond 読むと覚醒されざるを得ない小説がある。これはその種の小説だ。わたしは覚醒させられる作品が好きだ。チェスタトンのこの短篇集は短篇でここまで…
Tanis Helliwell, Summer with the Leprechauns: the Authorized Edition (Wayshower Enterprises, 2012) 驚異の書だ。このレベルの接触をした人物はルドルフ・シュタイナー以来かもしれない。つまり、百年ぶり。といっても、あくまで人間の時間の尺度によれ…
Jeanne Crane, Visiting the Thin Places of Celtic Ireland (2013) この書には感謝しかない。客観的に見れば、素人同然の著者が書いた旅行案内ともつかぬ旅行記ともつかぬ小冊子といえる。しかし、その著者が熱烈な愛情を注ぎ、猛烈に読書し、探究心いっぱ…
Bob Dylan, 100 Songs (Simon & Schuster, 2017) 意外なことにボブ・ディランの手頃な詩集がなかった。2016年のノーベル文学賞受賞以来、世界中の大学で少しづつディランが教えられ始めているけれども、適当なサイズの詩集がなかった。このほど出た、この百…
月村了衛『追想の探偵』(双葉社、2017) 月村了衛の幅の広さを思い知らされる作品。面白かった。「機龍警察」シリーズの読者なら、著者がメカやSFに詳しいことはよく知っているけれど、ファン層のマニアック度が半端でない、特撮物に焦点をしぼった作品を書く…
青山繁晴『危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実』(扶桑社、2017) 『ぼくらの真実』にあとがきの形で大幅に加筆した新書版。冒頭のカラー写真多数およびあとがきが充実している。ただ、核になる部分はやはり『ぼくらの真実』にあると思われる。本文に…
西和彦『定年後の暮らしの処方箋』(幻冬舎、2017) 著者「西和彦」のことを、あのアスキーの西和彦氏と勘違いして手に取った。読んでみて別人と判明。NPO法人住環境ネット理事の西和彦氏であり、建築物の商品企画・市場開発に従事してきた人物だった。著者は…
Life 'Bob Dylan' (2016) ハードカバー版(2012)をボブ・ディランのノーベル文学賞受賞を機に関連する序文をくわえ電子書籍化したもの。元のハードカバーは96ページで、この長さなら、内容がおもしろいこともあり、じゅうぶん読み切れる。Life 誌の編集者た…
「すばる」2017年8月号 横尾忠則+鴻巣友季子「宇宙的広がりを読み解く——ボブ・ディランの詩(うた)の魅力」25ページにわたる対談。題材はボブ・ディランの 'Blowin' in the Wind'.横尾はディランと意外な関係がある。1984年か85年に、ジャケットをデザイン…
伊坂 幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂 幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』を読むよう勧められた。ボブ・ディランの歌が出てくるからだ。読んでみると、怒りがこみ上げてくる。読むように言われたことに対してではない。小説に描かれた暴力にだ…
アーサー・C・クラーク『地球幼年期の終わり【新版】』 (創元SF文庫、2017) アーサー・C・クラーク(1917-2008、英国のSF作家)の生誕百年にあたり、今やSFの古典の名を不動のものにしている『地球幼年期の終わり』が新版として、東京創元社から創元SF文庫の…
花咲 てるみ『なぜ祈りの力で病気が消えるのか いま明かされる想いのかがく』(明窓出版、2017) 本書は祈りの力でなぜ病気が消えるのかをテーマにしている。しかし、議論は祈りから始まらず、生れ変わりから始まる。転生を前提として、心に二つあること、体に…