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レプラコーンとの夏——静修生活転じて異界の修行となる


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Tanis Helliwell, Summer with the Leprechauns: the Authorized Edition (Wayshower Enterprises, 2012)

 

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驚異の書だ。

このレベルの接触をした人物はルドルフ・シュタイナー以来かもしれない。つまり、百年ぶり。

といっても、あくまで人間の時間の尺度によればの話。



アイルランド系カナダ人の著者タニス・フェリウェルは一夏ほど瞑想の生活をするつもりでアイルランドにやって来た。アイルランドを始め、世界にはその種の生活に適した静修所(retreat)があるが、この場合は、人里離れた所にあるコテージを一夏借りて暮らすものだった。

ところが、そのコテージには何と先住者がいた。レプラコーン一家だ。村の人に聞くと、コテージはレプラコーンの通り道の真上に建てられているという。だから、村人はコテージを「妖精の出る」(haunted)家と呼んでいる。



文章があまりにもうまく、上質のビクトリア朝の小説でも読んでいる気にさせられるので、うっかりするとフィクションかと思ってしまうが、本書はフィクションではない。

端的に言えば、この星の自然を司る者達(エレメンタル)が従うルール・法則、その者達のたどった物語、この世界を協調して改善してゆくための示唆・提言などを詳述した本だ。

といっても、それを記した、人間界におけるような書物が存在しないので、直接、地水火風のエレメンタルたちから教わることになる。そのためには、学ぶ者自身がある種のイニシエーションを通らねばならない。

全体として、人間が置かれた地球のことを、深く広く、根本のところから静かに考えるのにうってつけの本だ。

なお、エレメンタルの中には人間の身体に深く関わるエレメンタルもいる。その意味では、身体を深く考えるのにも適している。



本書の著者のことは Jeanne Crane の書 (Visiting the Thin Places of Celtic Irelandを通じて知った。

本書に出会うような人は何かしら数奇な縁に導かれるのかもしれない。この縁に感謝している。

アイルランドといえば妖精の国として知られるが、このレベルまで深く妖精のことを書いた本は恐らく類書がない。フォークロアが外側からの習俗の観察の学とすれば、本書はいわば内側からその世界のことを語ったものだ。知る限りでは英語の書物としては極めて稀な書。



著者はコテージを1か月の約束で借りていた。このコテージは売れたため、5日後には新しいオーナーに引き渡さねばならない。新しいオーナーは今は作家ハインリヒ・ベルのコテージに住んでいるが、そのベルが帰ってくるので、こちらのコテージに引越す必要があったのである。

著者はできれば夏の残りの期間もこのコテージに住みたいと、現在のオーナーの息子に告げた。厚かましい願いだが、レプラコーンにそう言えと唆されたのだ。当然、息子はベルが帰ってくるので無理だと返答した。

その結果、どうなったか。非常に不思議なことが起きる。レプラコーンは人間と違う時間に生きているので、人間界の未来のことも分かるといわれるが、それがどう関わるか。興味がおありの向きは本書で続きをどうぞ。



原著は1997年刊。本書は新しい序文とレプラコーンのメッセジを加え、改訂されて authorized edition として2011年に出たものの電子版。

 

 

Summer with the Leprechauns: the authorized edition

Summer with the Leprechauns: the authorized edition

  • 作者:Helliwell, Tanis
  • 発売日: 2011/04/21
  • メディア: ペーパーバック