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ロシア

ロシア小説における「子供時代」のトポスの変遷

リュドミラ・ウリツカヤ『子供時代』(新潮社、2015)の「訳者あとがき」で沼野恭子は子供時代を扱ったロシア小説の系譜に触れている。 19世紀半ばから20世紀後半を眺めわたすと、〈ロシア文学には伝統的に「幸せな子供時代」と「惨めな子供時代」の両極が存…

1949年のモスクワの子供時代をとどめた奇跡の短編群

リュドミラ・ウリツカヤ『子供時代』(新潮社、2015) 著者のリュドミラ・ウリツカヤ(Людмила Улицкая)は1943年生れ。モスクワ大学では遺伝学を専攻した。現在ロシアでもっとも活躍する人気作家。その6編の短編を収める。1949年のモスクワとおぼしき町に住…

Mise an doras. わたしは門である。

アイルランド語訳聖書から(An Biobla Naofa)。Soiscéal Naofa Íosa Críost de réir Eoin 10.9-10 9 Mise an doras.Más tríomsa a rachaidh duine isteach, slánófar é.Rachaidh sé isteach is rachaidh sé amachagus gheobhaidh sé féarach. 10 Ní thagann…

安岡治子「ドストエフスキーと正教」を読む

大江 健三郎他『21世紀 ドストエフスキーがやってくる』(集英社、2007) 「正教の作家」ドストエフスキーを考える際に大いに手がかりになる。 晩年の短篇「キリストのヨルカに召された少年」について正教司祭ステファン内田圭一師が「ドストエフスキィの作…

安岡治子「ロシア文学における東と西」を読む

塩川 伸明、沼野 充義、宇山 智彦、小松 久男 編『ユーラシア世界1 〈東〉と〈西〉』(東京大学出版会、2012) ユーラシアについて人文社会系諸学の最新の知を集め21世紀以降の世界を展望する視座を提供する、意欲的なシリーズ「ユーラシア世界」(東京大学…

プラトーノフ『ジャン』

1934年、アンドレイ・プラトーノフ(1899-1951)が作家同盟により「中央アジアのトルクメン共和国に作家団の一員として派遣され」る(安岡治子の集英社刊『ロシア III』[1990]のプラトーノフ解説)。この取材旅行に刺激されて書いた中篇小説が『ジャン』だ。…