『世界民謡全集〈第3〉イギリス篇』 『世界民謡全集』の第3巻(イギリス篇 I)。「イギリス民謡集」ははじめ1巻だけで完結するはずであったが、実際に編集してみたらとても1巻には収まらなくなったので2巻にしたとのことである。それほどイギリスには知られ…
Q:What is Sean-nós?A: Literally Sean-nós means ‘old way’. It is the oldest form of singing in Ireland. Sean-nós songs are usually sung unaccompanied. Excellent examples are the Irish language love songs: Úna Bhán, (Fair Úna), An Caisleán G…
恩田陸『雪月花黙示録』 時は近未来(おそらく21世紀後半)。所はミヤコ(平城京と呼ばれる)とナゴヤ(中部にある)。それを舞台に、ミヤコの凄腕の剣士、春日家のきょうだい(兄とふたりの妹)が、高校の生徒会長選挙をきっかけに、日本の再編をめぐる権謀…
Lumiere, Special Edition (Sony, 2010) 美しい歌声の二人組。 アクースティック・ギター(Donogh Hennessy)を中心とする簡素で趣味のよい伴奏で、二人が時に一人で時にデュオで唄う。 その歌声はまっすぐで、ためらいがない。気持ちよいくらいに素直な唄い方…
『芥川竜之介歌集』 大正3(1914)年から4(1915)年にかけての芥川龍之介の短歌や旋頭歌。 わずか二年間の歌を集めたものなのに、歌風は多彩である。 「紫天鵞絨」「桐」「薔薇」「客中恋」「若人」「砂上遅日」が収められている。これらの表題にはルビがな…
アイルランド・アラン諸島東島の歌い手ラーサリーナ・ニ・ホニーラ (Lasairfhíona Ní Chonaola) のラーサリーナ Lasairfhíona という名前について。 ソロ二作目 Flame of Wine (LNC002, 2005) のタイトルがそのまま意味を表しています。 結論から言えば、文…
藤井太洋、梅原涼、十市社『セルフパブリッシングで「本」を出す』 セルフパブリッシングされた電子書籍が、たまたま編集者の目にとまり、紙の書籍として出版された三人の著者が、デジタル・セルフパブリッシングの現状、および商業出版されるまでの経緯を語…
Toquinho, Quarteto em Cy, Chico Buarque, 'Samba pra Vinicius' クァルテート・エン・シ(シー)の映像がないかと探していたら1本見つけた。これが大当たり。 Samba pra Vinicius - Toquinho, Quarteto em Cy, Chico Buarque Poeta, meu poeta camaradaPoe…
豊島ミホ『銀縁眼鏡と鳥の涙』 豊島ミホの短編小説。カメラをめぐる高校生群像を、繊細な文体で描きだす。 文体そのものが青春期特有のふるえるこころを切取ったようである。すっかりファンになった。が、もはや豊島ミホは小説家ではない。いまは漫画家であ…
泉鏡花「外科室」(岩波文庫『外科室・海城発電』所収) 「夜行巡査」と並ぶ、鏡花の出世作。明治28(1895)年に発表された小説。 小説としては、ごく短いけれども、濃い。吉永小百合主演で映画化(1992)されたとき、その上映時間をつかって、「一瞬のよう…
泉鏡花「夜行巡査」(岩波文庫『外科室・海城発電』所収) 鏡花の出世作のひとつ。職務にあまりに忠実な巡査を描く短編小説。 鏡花の作文技術の高さは早くも明白、隠れようもない。みごとな短篇。明治28(1895)年作。ディケンズもかくやと思われる、人物造…
Seamus Begley, The Bold Kerryman (IRL, 2015) 多くのファンの夢が実現した。 アコーディオンの名手として知られるシェーマス・ベグリが類稀な歌い手でもあること。アイルランド伝統音楽ファンの間で周知の事実だ。だが、彼はこれまでアルバム1枚でせいぜい…
泉鏡花「文章の音律」 近頃の小説の文章に、音律といふことが忽にされて居る、何うして忽處ではない、頭から文章の音律などは注意もしてゐないやうに思ふ。 鏡花は小説の文章について、こう述べ、音律がゆるがせにされていると主張する。1909年に発表された…
〔蔵出し記事 20060805〕 産経新聞の「ひもとくスヌーピーの50年」2006年8月4日付で載った分。 原文はこんな感じ。 谷川俊太郎訳は「はくしょん!」「お大事に」。説明コラムは 「お大事に」外国ではくしゃみをした人に「お大事に」って声をかける習慣がある…
守本悠『わずか1000部で87万円稼ぐ電子書籍の作り方』 Kindle本の販売のため、価格の決定方法とプロモーションのやり方を考察した本。 電子書籍出版の指南書はいろいろ出ているが、類書にない角度だ。 Kindleストアで本を販売するには何を考えればよいのか。…
〔蔵出し記事 Thu, 20060706〕 ジズーはジネディーヌ・ジダンの愛称だ。 こういうフランス人には見えない Z で始まる名は、例えばザズーを想起させる。マグレブの伝統か。Z 会と呼ぼうか(笑)。 ジネディーヌ・ジダン (Zinédine Zidane) はアラビア語の名…
サン=テグジュペリ『夜間飛行』 サン=テグジュペリの『夜間飛行』 Vol de nuit を漫画化したもの。 読み始めたらやめることができない。 1930年頃の南米が舞台。航空郵便事業開拓期の人間模様を迫真のタッチで伝える。 1931年にフランスで出版。その年のフ…
英詩の基礎知識のような本は以前は結構見かけたものだ。 けれど、最近は、とんと見かけない。需要がなくなったのか、読む人がいなくなったのか。 でも、世界的には英詩の読者は減っている気配はない。ジャック・アタリの本を開いても、エマニュエル・トッド…
〔蔵出し記事 20060704〕 中田英寿選手の引退宣言のイタリア語版を読んで驚いた。日本語版より詳しい部分がある。ひょっとして‥‥。 このメッセージは、最初にイタリア語で書いた、ないしは着想したのではないか。タイトルが日本語だと “人生とは旅であり、旅…
トーベ・ヤンソン『小さなトロールと大きな洪水』 ムーミン童話シリーズの最初の作品。 楽しい。あたたかい。ふしぎ。 こんな物語が1945年にかけたなんて。おどろいてしまう。 かいたのは物語の文章と絵。作者のトーベ・ヤンソン(Tove Jansson, トゥーヴェ…
ジャズ・ピアニストが弾くフォークソングは、フォークミュージシャン同士のカヴァーとはまた違う味わいがある。 とは、キース・ジャレットの 〈マイ・バック・ページズ〉 (Somewhere Before, 1968) 以来、多くの人が感じてきたことだろう。 このことをブラ…
新美南吉「デンデンムシノ カナシミ」(『新美南吉童話集』所収) 童話を再認識するのに遅すぎることはない。 「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ」 このことばを最初に読んだとき、雷に撃たれたかとおもうくらい、こころがゆさぶられた。ちいさな子が読…
小原玲『アザラシの赤ちゃん』 動物写真家の小原玲が20年間撮り続けたアザラシの赤ちゃんの写真集。 見どころはアザラシの赤ちゃんが見せる愛くるしい表情の数々。生後わずか2週間しか見られない貴重な姿。 小原玲はもともと動物写真家ではなかった。戦争や…
天野隆『2時間で丸わかり 相続の基本を学ぶ』 相続税の基礎控除が平成27年1月1日から6割に引下げられた。課税対象者は当然増えた。本書は幸せな相続のために「節税」と「爽族」(争わない爽やかな相続を指す造語)に焦点を当ててまとめた本だ。 基礎控除額は…
〔蔵出し記事 20060621〕 同じ日に、敬愛するスポーツ選手たちから同じような謙遜の言葉を聞いた。 2006年NBA決勝戦でチャンピオンリングを手にしたマイアミ・ヒートのドウェイン・ウェイド。MVP に選ばれた直後のインタヴューで「まず、神にすべての賛美を…
高村光太郎「ミケランジェロの彫刻写真に題す」 高村光太郎がミケランジェロを論じて宇宙論に至る文章。 詩人にして彫刻家の高村光太郎には「(私はさきごろ)」というミケランジェロの宗教を論じた文章がある。 これが宗教論としてはいかにも独断的で説得力に…
ケルト音楽専門インターネット・ラジオ。サブチャンネルが 15 もある。伝統音楽や女性・男性アーティスト等々。米国の AccuRadio の局の一つ。知るかぎりでは2006年頃から続いている。その頃はサブチャンネルは6つだった。 ジャケットをクリックすると、amaz…
ジークムント・フロイト『精神分析入門・夢判断 (まんがで読破)』 なかなか読まれない名作を「漫画」の形で親しみをもたせる「まんがで読破」シリーズの1巻。描きおろし。漫画化の担当を行うバラエティ・アートワークスは会社が沖縄県話国場にある。代表の兼…
Living Tradition 誌2006年5-6月号の Chris MacKenzie による Jenna Cumming, Kintulavig のレビューは稀有なものだ。同誌でこれほどの美しい賛辞を読んだ記憶がない。レビューワーが心の底から感動していることが文章に滲み出ている。私も同アルバムには心…
第150回芥川賞受賞作の小山田浩子「穴」について(『穴』所収)。 ペソアがこんなことを言っている。「良い散文を書くためには、詩人でなければならない。というのも、よく書くためにはいずれにしろ詩人であることが必要だからだ。」 すると、小山田浩子は詩…