皇后さまが感動された童話
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新美南吉「デンデンムシノ カナシミ」(『新美南吉童話集』所収)
童話を再認識するのに遅すぎることはない。
「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ」
このことばを最初に読んだとき、雷に撃たれたかとおもうくらい、こころがゆさぶられた。ちいさな子が読んだら、あるいは、読み聞かせてもらったら、その衝撃はいかばかりだろう。
でんでんむしは、自分の殻に悲しみが詰まっていることから、もう生きてゆけないと絶望し、仲間のでんでんむしに話す。すると、みんな、おなじように悲しみをかかえていることがわかる。上の述懐のことばはそのとき、もれる。そこで、生きてゆくことを決意する。
他者がおなじく悲しみをかかえているとわかったところで、自分の悲しみはいささかでも減るだろうか。ここから先は各自が考えるべきことだ。
子供にこんなものを与えるべきでないとする意見もあるかもしれない。だが、皇后さまは違う。この童話は「多くのことを学ぶきっかけになった」とのことだ。
でんでんむしはかわいいだけの生き物ではない。まして、人間は。