A=B に二種類あるアイルランド語って?――コピュラに関する最上の説明の書
[スポンサーリンク]
梨本 邦直『ニューエクスプレス アイルランド語(CD付)』(白水社、2008)
初級アイルランド語入門書。CD付。
A=B の「=」の役割をするコピュラ(繋辞)はアイルランド語最大のキモのひとつ。これが分れば、まあ、アイルランド語が分ったといってもいいほど。
が、それほどのものだけに理解は一筋縄ではいかぬ。日本で考えられるかぎりの最高のコピュラの説明を収めたのが本書。書いたのはコピュラの研究でアイルランド国立ゴールウェー大学で博士号をとったひと。これ以上のものは日本語では望めない。
A=B には二種類ある。「私は山田です」は同定用法という。コピュラ(is, イスと発音)と代名詞と定名詞とを使って
Is mise Yamada.
といえる。「はい」と答えるときは代名詞を繰返して
Is é.
という(3人称単数男性の場合)。シェーと発音する。A=B同定用法のキモはAもBも決まったものだということだ。だからイコールになる。
もうひとつのA=Bは「私は男です」のタイプ。分類用法という。コピュラと不定名詞(や形容詞)と(代)名詞とを使って
Is fear mé.
といえる。「はい」と答えるときは「そう」 ea (中性代名詞)を用いて
Is ea.
という。シャーと発音する。A=B分類用法のキモは一方が不定のものであることだ。だから、その不定のものがより大きな集合を成すともいえる(数学的に書けば A∈B)。
これだけのことがきちんと説明された本は知るかぎりではない。最後の集合の考えは評者が付け加えた。
まことにすばらしい本だが、唯一の欠点は、第1刷でやや誤植が多いことだった。現行の第3刷でそれも解消され申し分ない。
A=B に二種類あるアイルランド語ってどうです? おもしろそうでしょう。