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現代詩の愉悦、ここにあり


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福間健二『新しい人生 Selected Shorter Poems 1981~2013 vol.2』 (マイナビ、2014)[Kindle版]



 福間健二の『新しい人生』は、『彼女に会いに行く』に続く自選詩集。この二冊で1981年以降の百四篇の詩を収める。

 いろいろな傾向の詩が収められている。多くは既出版の詩集から採られているけれど、なかには詩集未収録の詩もある。なかで、「PW3シリーズ」からの詩(2011-12)が本書には五篇はいっている。これは、ツイート連詩「pw3(ポエティック・ワンダー・スリー)」のことで、Twitter上で三人の詩人が連詩をおこなった。毎回、Twitterの字数制限内で書くルール。軽快なフットワークが感じられることも多い。著者は今もTwitter上でときどき詩を発表している。

 「PW3シリーズ」の詩のひとつ、「なぜいつもそんなに酔う?」はこんな感じだ。

子宮じゃなくて、魂と音楽から生まれた
ルーマニアの娘たち。
パンを上手に焼いて、体操もうまい!


むずかしいと感じられる詩行もあるけれど、こんな親しみやすい詩行もある。

 男女とも本書にはよく登場するが、次の箇所はとびきりすばらしい(「四階の窓から」)。

図書館から出てきて
彼女は
反物語的に
自転車にのる
ショートパンツからのびた
ペダルを踏むあしが
四階の窓からみる男を
誘惑する
でもなにもおこらないだろう


そのまま物語になりそうなのに、あらかじめ「反物語的に」と書くことで、かえってつよい印象をのこす。現代詩の愉悦、ここにあり。(この詩行の卓越性は、「反物語的に」の言葉を抜いてしまうとどれほど平板にひびくかで確かめることができる。)