秋月辰一郎『体質と食物―健康への道』(クリエー出版、1980)
小著ながら中身が濃い。
長崎で被爆しながら病院長である自身を含め周りのスタッフに原爆症が出なかった原因の一つは「わかめの味噌汁」(22頁)と書く。
人間の体質を作り変えるのが医学の姿とし、「食い改めよ」と説く。副題の「健康への道」が、自身の体験をふまえた肚の底からの言葉である。
著者は食養生や食物の研究を巡りめぐって、味噌にたどりついた。「味噌は、日本人の食物のかなめである」と知ったのである。
また、こうも言う。「日本の国土、日本人の体質によって受け継がれた伝承のものである」とも。「身土不二」という言葉があるけれども、まさにそうである。
著者がこの思想に至ったのは自らの病弱な体質がきっかけであった。結核を発病し、病床で天井を眺めながら思いついたのである。自分自身の食物を改めよう。そうすれば身体が変わると決心したのである。
本書の真髄の部分は次の箇所と信ずる。
日本人にとって、味噌は特に良質の油脂とミネラルの供給源であるから、私たちの放射能の害を一部防禦してくれたのである。この一部の防禦が人間の生死の境において極めて重要なのである。(24頁)