サム『古事記転生』(サンマーク、2023)
正確に言うと、古事記の周知の出来事が別の脈絡をとって現代に影響し、その流れが今後も左右しそうだと感じさせる、ある別の世界線を、物語の形で分りやすく提示したもの。
荒唐無稽だと思う読者もいるだろう。しかし、著者が発信しづつける動画を見ている読者なら、これは知られざる日本史の認識に立つものだと、感じ取れる。
その動画ブログは Toland Vlog という。トゥーランド・ヴィーログと著者らは呼ぶ。
歴史や神話などを、さまざまな角度から取上げ、興味深い視点を、熱い語り口で伝えてくれる YouTube 動画だ。
つまり、本書はユーチューバの著書である。
本書は物語の体裁をとっているので参考文献などは一切挙げられていないが、動画のほうではさまざまなソースが出てくる。中には珍しい本や、人物、遺跡などが含まれ、著者の思索や考察、体験などが色濃く織込まれている。
結果として、動画では独自に作成した系図などの図表がふんだんに使われ、奥行きのある理解が得られる。
それらの予備知識をもとに本書を読むと、非常によく分るのだ。
おそらく、本書のベースの一つとなっているのは、富家の伝承だろう。そうした方面に関心のある人には一読の価値がある本だ。
*
[Kindle版]
*
富家の伝承