東京DMAT隊員・八雲響の葛藤と成長をえがく第2巻は、人間ドラマとして読みやすい。災害医療は自分向きでないと思い、辞めたいと願う医師の思いと、周囲の状況とが運命的な交わり方をするさまを劇的にえがく。
見所は十分な医療資材がない災害現場で究極の選択を迫られる医師たちの内面の葛藤だ。何度も絶望しかけるが、そのたびに、八雲は「できるできないじゃない。やるしかないっ」と、生命を救う天命を自覚する。その聖なる決意にもかかわらず、患者が死ぬこともある。それがもたらすドラマの深化は読みごたえがある。
後半に登場するアメリカ帰りの天才脳外科医・紅美(実は院長の娘)は、やや違和感を与えるかもしれない。が、この女性は八雲にとって運命的な出会いではないかと予感させる。
くじけそうになる八雲に院長が告げる医聖ヒポクラテスの箴言は、紀元前の古い言葉ながら、既に医の道の厳しさを喝破するものとして記憶に値する。
人生は短く、術のみちは長い。機会は逸し易く、試みは失敗すること多く、判断は難しい。
紅美と八雲という波乱要因が出てきたこともあり、今後どう展開するのか、ますます楽しみだ。
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