30年以上前に始まった未完の大作漫画
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あしべゆうほ『クリスタル・ドラゴン 25』(秋田書店、2007)
アイルランド語に興味を抱いたきっかけが漫画『クリスタル・ドラゴン』とする人がいて、どんな作品かと読み始めた。
本第25巻は2007年末に出た今のところ最新刊。作品は1981年に開始され、作者のあしべゆうほさんは2009年に還暦を迎えられた。息が長い。
古代アイルランドが出発点だが舞台は北欧やローマやアルプスを含み、広い時空を扱う。それぞれの言語をルビで振り神話伝説を渉猟した成果が窺え、読みごたえがある。
言葉による説明は最小限だが時に非常に印象的である。
作者の力量はしかし想像力豊かな絵にこそある。時として音が聞こえてきそうな繊細な絵もあれば雄大な迫力を前面に押出した絵もある。
光と影の使い方、水晶の質感、水の表現等々、唸らされる場面は多い。
古アイルランド語の発音やドラゴンの希薄な存在感など注文をつけたい点がないでもないが、それよりこの作品がさらに大いなる発展を遂げ、作者が描きたい世界を描ききることを切望する。