13歳ならではの、人間や動物への曇りない感性
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エリザベス・グージ、石井 桃子訳『まぼろしの白馬』(岩波少年文庫、2007) [Elizabeth Goudge, The Little White Horse, 1946]
19世紀半ばの英国デボン州の村に暮らす13歳の少女の物語。
ファンタジー要素は僅かだが、その僅かな部分にみずみずしい息吹を感じさせられる。
13歳でないと分からない、曇りない感性でとらえた周りの人間や動物の世界。
ぼくは大人になってから読んだ口だけれど、この鮮烈さはちょっと忘れ得ない。不思議なことに、主人公の心に映った世界が、手にとるように感じ取れる心地がする。
恐らく、神話的世界の底にある感性との接触の仕方が、永遠の新鮮さをとどめる形で書かれているのだろう。
神話世界との接触に現れる馬ということでは、波打ち際に幻視される'Water Horse' のことが想起される。
その題名の詩集がある。書いたのはアイルランドの現代詩人、ヌーァラ・ニゴーナル。The Water Horse (2002) という詩集だ。彼女の場合には、神話世界との接触が、アイロニーをともなって現代性を帯びるという特徴がある。ファンタジーのように異世界に向かうベクトルと現代社会をにらむベクトルとが緊張感をはらむ。そこに鋭さもある。
さらに、ハリ・ポタとの関連でも注目される。作者ローリングが次のコメントをしているとウィキペディアにある。
In 2001 or 2002 J. K. Rowling identified The Little White Horse as one of her favourite books and one of few with direct influence on the Harry Potter series.