Tigh Mhíchíl

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記事一覧

Gaeilge

Aon Focal Eile

アイルランド友の会メールマガジンで Mitzi さんが 《Aon Focal Eile》 というCD中の歌について質問をし、タイトル及び歌詞の 'Aon focal dar, focal two, focal eile' はどういう意味かということでした(10月9日付)。以下、何かの参考になればと思い、私…

Maire Ni Bhraonain の発音

Enya 姉妹の発音について Gaeilge-B リストで話題になった。Panu さんがいつもながらの明快な説明をしているので、引用します(太字は私)。 Date: Wed, 6 Oct 2004 13:15:10 +0300 Sender: Lucht Foghlamtha na Gaeilge From: Panu Petteri Höglund Subject…

Slan leat!

去り行く人に「さようなら」 → Slán leat! いわば「揮手自茲去」に当たる場面。なぜ去って行く人にはアイルランド語では leat (with you) となるのか。これを tabhair do leabhar leat (bring your book with you) に類する表現と考えることもできるか。この…

ショーン・マグワイア本人は McGuire と綴る

上にあげたウォリスの記事中にショーン・マグワイアのことが出てくる。本人に Maguire と McGuire のどちらで綴るのか尋ねたら、後者でサインしてくれたそうです。 I once asked Seán whether he spelt his name as 'Maguire' or 'McGuire' and he affirmed …

アイルランド語の姓に関する真実 3

Mac an Bhreitheamhan という姓は英訳されて Abraham となった → ホント MacLysaght の挙げる例の中でも最も信じがたい例がこれ。Abraham はアイルランド以外ではもちろんユダヤ人の祖アブラハムのことで、セム語派の名前である。*1 Mac an Bhreitheamhan (…

アイルランド語の姓に関する真実 2

Mac Giolla Eoin という姓は英訳されて Monday となった → ホント きのう書いた Smith の例は「正しい」翻訳の例だったが、きょうのは「間違った」翻訳の例。ふつうに英語化すればこの姓 Mac Giolla Eoin (「聖ヨハネの帰依者の息子」の意)は音をとって Ma…

アイルランド語の姓に関する真実 1

MacGowan という姓は英訳されて Smith となった → ホント 信じられないような話だが、本当。なぜこうなったかと言えば、 Mac an Ghabhann (son of the smith)だから。gabhann は gabha (smith) の属格形。 アイルランド語の姓が歪んだ最大の原因は英語の導入…

セミはアイルランド語で?

今朝、セミの声が聞こえました。今年初めて。こちらでは祇園祭とともに梅雨明けがくるというのですが、早くもその感じです。(写真はマレーシアのセミの切手) セミはアイルランド語で píobaire fraoigh と言います(EID)。ふつうの辞書にはなかなか出てい…

アイルランドの姓における Mag

きのうのエントリにショーン・マグワイア(Seán Maguire)のことを少し詳しく書き加えました。 Mac (「息子」の意)はともかくとして、Mag については普通の辞書類には説明がないので、ここで少し触れておきます(SI, xiii)。 MacG 姓は(特にアルスターに…

アイルランド語の姓に関する俗説 3

Mac と Mc と M' とは違いがある → ウソ 違いはありません。Mac 以外は単なる省略記法です。ましてや、Mc はアイルランド系、Mac はスコットランド系などというのはウソです。<追記> きのうのエントリに熊谷さんからのコメントが寄せられています。

ショーン・マグワイア(Sean Maguire)

上の MacGuire に関して下に熊谷さんからいただいたコメントがあります。フィドル奏者として著名なショーン・マグワイア(1924- 、ベルファスト生まれ)の名前の綴りに関してです。熊谷さんお持ちの3枚のアルバムごとに違う綴りだそうです(”McGuire” ”MaGui…

アイルランド語の姓に関する俗説 2

アイルランドにおける Mac 姓はスコットランド起源である → ウソ この説をとれば本来アイルランドの姓である MacMahon や MacGuire などの説明がつかなくなります。

アイルランド語の姓に関する俗説 1

アイルランドにおける姓の命名法は Brian Boru が創設した → 根拠なし これはかつて私も触れた俗説ですが、実は根拠がないと言わざるを得ません。なぜなら、Brian Boru 王 (941-1014、王位 1002-14)がこの姓の附けかた(Mac や O を父や祖父のクリスチャン…

アイルランド語長音記号の入力法

以前にもこの話題に触れたことがある。 いま世界で最もさかんなアイルランド語活動をしているグループの一つが提供している頁に Macintosh 向けと Windows 向けの解説がある。こちらの画面左下の Trouble with Fadas? をクリックすれば見られる。これまで私…

曇り

雲とアイルランドとは関係が深い。 とりあえず、曇りをいうアイルランド語の表現。 (spéir) néaltach (spéir) scamallach ceoch aimsir dhorcha aimsir mhúscraí spéir dhúnta さしづめ、今日の天気は次のように言えるか。 Tá spéir dhúnta againn inniu.

傘を差す

下校時の小学生の列に出会った。みな傘を手にしているがよく見ると差している者いない者半々である。 元気なやっちゃなーと思ったがよく考えるとアイルランドでは傘を差す人を見たことがない。理由は簡単。横なぐりの風が同時に吹くので傘は役に立たない。ヤ…

アイルランド語オンライン辞書

にわとりさんのミャスカナフェイで見つけました。 Irish dictionary online 英語→アイルランド語と、アイルランド語→英語の語句の訳が出ます。アイルランド語の熟語表現が入っているので、結構おもしろい。アイルランド語を入力する時にちゃんと長音記号附き…

one literary dialect

Robin Flower, The Irish Tradition (1947/94), p. 124: The literary men of medieval Ireland were no stay-at-homes, they passed readily from the house of one chieftain to another, from monastery to monastery, and appear to have both spoken an…

Harry Potter (Irish Gaelic edition) due 5 Oct.

ハリー・ポッター第1巻(賢者の石)のアイルランド語版が2004年10月5日に出ることが決まった。英 Bloomsbury 社から。ISBN 074757166X 。非常に楽しみ。 J. K. Rowling: Harry Potter and the Philosopher's Stone (Book 1). Irish Gaelic language edition…

アイルランドを表すことば <追記>

アイルランド語でアイルランドを表す言いかたがどれくらいあるか。 それについて論じだしたら、一日に一つ取り上げるペースでも半年以上かかる。いま分かっているだけでも、少なくとも 200 はある。 とりあえず、最も基本的な 14 の言いかたをあげよう。 Ini…

Mac Giolla Bhríde

アイルランド語の姓には Mac Giolla + <名詞の属格> という構造をとるものがある。シャン・ノースの歌い手 Doimnic Mac Giolla Bhríde のような名前がそうだ。「ブリージの僕(しもべ)の息子」の意。 Mac が附く前の形が元にある。たとえば、Giolla Íosa…

アイルランド語の姓名における O (5)

《Ó Briain 変奏曲》をもうちょっと続けよう。これまで、Ó の主格と属格の形を見てきたが、ここで呼格(vocative)の形を加えよう。 主格 ó, 属格 uí, 呼格 uí 実は何のことはない。呼格と属格とは同じ uí なのだ。それでは主題 Seán Ó Briain さんを変奏し…

Clannad を古いアイルランド語から眺める

「Clannad をアイルランド語で解く」でアイルランドの音楽グループ Clannad を現代アイルランド語の立場から解いてみたところ、思いがけず、ssuzuki さんからコメントをいただいた。 その後、古いアイルランド語まで少し手を広げて調べると、同じまたは似た…

アイルランド語の姓名における O (4)

さあ、それではいよいよ、Ó が附く名前が属格になる場合を見よう。 ちょっと、Ó の属格の形を復習。 ns. ó, gs. uí 最初は次のような例から入るのがよいだろう。右側が今回の属格の例。 Tomás Ó Dónaill → teach Thomáis Uí Dhónaill この例をじっくり見てい…

アイルランド語関連の文献

このブログで引用しそうな文献の略語表をこちらにまとめました。今後も、適宜改訂してゆきます。

アイルランド語の姓名における O (3)

アイルランド語の第一変化名詞のつづき。 第一変化に属する名詞は、すべて男性名詞で、広子音で終わる 。*1 属格単数形を作るには、語末を狭子音にすればよい。 広子音を狭子音にする(caolú)方法にはいくつかある。一番簡単な方法は次の通り。 前に i を附…

アイルランド語の姓名における O (2)

前回、男性名詞の第一変化という言葉を使ったが、説明しなかった。これを説明しようとすると、そもそも名詞の格とはということになる。おおごとである。 実用的な観点から言うと、この部分は、できれば触れないで済ますほうがよい。現に、最も詳しい文法的記…

アイルランド語の姓名における O (1)

最も多く質問を受けるのは、一つにはアイルランド語の固有名詞に関すること。ぼくは固有名詞研究(onomastics)は専門ではないけれど、たとえば、アイルランド語の人名に関して包括的にきちんと論じようとすれば一万頁は必要になるだろうという予感。それほ…

Clannad をアイルランド語で解く

この有名なアイルランドのグループ名について、いろんな説が飛び交っているらしい。ここではアイルランド語の立場から解いてみる。なお、巷で言う「ゲール語」はすべてアイルランド語ないしアイルランド・ゲール語と読替えてください。「ゲール語」という単…

NEET という言葉を調べてみたら

NEET という言葉がある。「無業者」と訳すらしい。普通の辞書には出てない。もちろん、「英辞郎」にも出てない。 英国の労働政策で用いられるようになったアクロニムらしい。Not in Employment, Education and Training の頭文字を取った。つまり、雇用され…