Andrew Thomas, Squidge: Little Elf, Big Problem
〔類似した題の Squidge: Little Elf, Big Trouble とは別の書〕
英国の小学校の先生アンドルー・トマスが書いた絵本シリーズの第2作(2011)。第1作 Squidge: Little Elf, Big Trouble (2010) はアマゾンのベストセラー10位以内に入るほどの好評を博しました。
主人公のスクィジは子供のエルフですが、大人のエルフがやることをしたいと思っているエルフです。
スクィジはいつも子供たちにプレゼントをくれるサンタの誕生日が明日であることを知り、なんとかプレゼントを贈りたいと思いつきました。急いでプレゼントを探さなければなりませんが、いつもプレゼントをくれるようなひとに、いったいどんなプレゼントをさしあげたらよいのでしょう。大人でも困ってしまうような難題です。
〔サンタのバースデーパーティの準備リストの一部。ぜんぶで20ページある。〕
これがタイトル「小さなエルフ、大きな問題」のわけです。
本書はこの課題をめぐってスクィジが奮闘するさまを楽しく描いてゆきます。ところどころに入る挿絵は想像力をかきたてる魅力があります。最後にはあっと驚く解決が待っています。
〔スクィジがプレゼント物色中に出会うホッキョクグマ〕
評者がいちばん印象に残ったのは著者トマスの英語です。じつに味があります。英国の子供には分りやすい英語かもしれませんが、英国以外の言語環境にいる人にとっては新鮮な表現が多く、驚かされます。勉強になります。ひとつだけ例をあげておきましょう。一日中プレゼントを探しまわったあげくの夜の話です。
While all the other elves got washed and dressed Squidge stayed in bed . . .
予定からはるかに遅れているあせりが感じられるおもしろい表現です。このような用例はふつうの辞書には出ていません。自分のあたまで考えるしかなく、その意味では言語感覚をきたえるには恰好の書です。子供向きだからといって馬鹿にできません。
このシリーズは知る限りでは電子書籍(Kindle, kobo)でしか読めません(ぼくは kobo 版で読んだのですが、現在は入手できません)。それらの読書端末で読めば、ジェームズ・ライトフットが描く絵は白黒に見えますが、カラー表示可能な環境(タブレット、PCなど)で読めばカラーの絵が楽しめます。