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日本に対して真の独立国としての自覚をうながす


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西鋭夫『富国弱民ニッポン』(広池学園出版部、1996)



 日本はアメリカの属国かという問いかけ。スタンフォード大学に長年勤める日本人研究者として、アメリカと日本の現状を解剖する書。原著は1996年刊だが今も古書ながら需要があるのは、本書がその価値を失わず、ますます必要とされていることの証だろう。

 題名はもちろん「富国強兵」をもじったもの。日本国民の現状が「弱民」なのだとしたら、その解決策はどのような方向に求めるべきか。

 まず、そもそも国力についての考え方を問う。日本では「カネの力」が国力だとの考え方が君臨している。〈しかし、巨大な「経済力」を司る知恵を、日本国民は持っているのだろうか〉と著者は問う。

 〈「富める国」と「弱い国民」との間にある深い亀裂が日本の苦悩〉であると、著者は断じる。その見立ての背後にある、戦後のアメリカによる、日本を「属国」にするための政策。〈「外圧」で国の政治・政策をおこなう日本〉は太平洋のチャンピオンたり得ない。

 本書は著者が〈アメリカから三十年間、母国日本に深い憂国の思いを持ち、観察していたことを率直に述べる〉書。〈アメリカが日本をどう思っているか、私のアメリカ人の友人たちが日本をどう見ているのかを、はっきりと述べてみようと思う〉と語る。

 数々の実例が挙げられるが、一つだけ挙げよう。1996年当時の話として語られるが、防衛大学校の卒業生の 10% 前後が「卒業と同時に民間企業に鞍替えする」という。アメリカの士官学校の卒業生が国にお返しせず、民間企業に鞍替えするという話など、滞米の長い著者でも聞いたことがないと書く。日本の防衛大学校の醜態は〈日本の将来の縮図、魂の抜けた日本を見るよう〉だと著者は語る。

 もう一つだけ、戦後教育のこと。アメリカへの「属国教育」が〈日本人の精神まで侵している〉こと。〈英語の代わりに、日本語を国際語にするためにはどうすればよいのか、といった発想が文部省からは出てこない〉。〈アメリカの文化・社会価値観が日本人の脳を支配するのは、もはや時間の問題だろう。そうなると「英語ができる者」だけが幅をきかせる日本となり、アメリカにとって理想的な植民地ができる〉。

 残念ながら現在の日本を見ていてこれらの主張に対し有効な反証を見出すことができない。著者西鋭夫(にしとしお)の著書が古書でしか売られないのはなぜなのか。新書で出ないのはなぜなのか。連合国軍による占領下の日本を扱った英文の著書 Unconditional Democracy: Education and Politics in Occupied Japan, 1945 to 1952 (Stanford University. Hoover Institution Press, 2003) が簡単に手に入るのとは大違いである。


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