電子書籍で読める村上春樹3選
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3選! あまりにも少ない。
だけど、しょうがないのだ。村上春樹の電子書籍ってあまりない。日本語の小説はほとんど電子化されていない。エッセーが少し電子化されている。雑誌に収録された短篇小説などは、その雑誌が電子化されればそれに伴って電子化されるケースもある。あと、英語訳などはほとんど電子化されているけれど。
ともあれ、読んだ中で3つ選ぶ。
走ることについて語るときに僕の語ること
走ることについて書き下ろされたエッセー。走ることだけじゃなくて、本人がいうとおり、〈僕という人間について(ある程度)正直に書く〉面があり、だから〈ランニングという行為を軸にした一種の「メモワール」〉として読んでもかまわないという。
読みだしてすぐに気づくことは、著者が自分の身体で経験したことを、率直に語っていることだ。〈一日も休まずに走るという生活〉という言葉がなんのてらいもなく書かれている。読んでいるうちに、こういう走り方が、どうやら小説の書き方にも通ずるらしいということが、読者にはわかってくる。そのあたりの呼吸がなんとも楽しいところだ。
あるいは〈まじめに走る〉という言葉とか。これを聞くと、ぼくなどはかつてアメリカで流行った本の題を思い出してしまう。Zen Running という本だ。あるいは、あるシンガーの 'Born to Run' という曲を思い出す。しかし、著者はラヴィン・スプーンフルを聞きながら走る。
村上さんのところ コンプリート版
著者に寄せられた質問に応えたもの。ありとあらゆる話題が出てくる。
紙冊体で省略された質疑応答がすべて収められているのに加え、質問用の特設ウェブサイトに載せられなかった質問まで入っている。日本語だけでなく、外国語の質問もある。
玉石混淆とまでいうと言い過ぎだろうけれど、中にはどうしてこんなものが? と思うようなのもないことはないが、概して大変おもしろい。
The Elephant Vanishes
短編作家としてのハルキ・ムラカミが世界文学で知られているのはこの英訳作品による。「象の消滅」の英訳だ。
町で飼われていたアフリカ象がある日、忽然と姿を消す。飼い主もろとも。だけど、その理由も、行き先も、手がかりも、何一つない。やがて、その話は忘れ去られる。
ミステリでもなく、ファンタジーでもなく。いったい何なのだろう。
ジェイ・ルービンの英訳はすばらしい。