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詩 音楽 アイルランド

記事一覧

和名の色名と英名の色名を教えてくれる電子書籍

長谷井康子『写真でつづるKindle色名図鑑: (感性をみがく色彩シリーズ)』 「e色彩学校」シリーズのひとつ。液晶画面で色彩の世界を案内する電子書籍。 まず、日本の色名。赤系から始まる。鴇色、韓紅色、蘇芳、鳶色の四色が着物のイラストと共に提示される…

町山智浩の本やラジオに宝がときどき埋もれている

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』 米国在住の映画評論家、町山智浩の発言に時々宝がふくまれている。 そのことを初めて実感したのが、映画「Hot Fuzz」の劇場公開を求める会の運動があった2008年頃だった。その運動についてふれ…

『資本論』第1巻をベースに物語化

『資本論 (まんがで読破)』 ドイツの経済学者、哲学者カール・マルクス(1818-83)の『資本論』はマルクス経済学最大の古典だ。本書はマルクスみずからの手によって世に問われた第1巻(1867)をベースに物語化したまんがだ。大著である原書への橋渡しになる…

日本の和菓子を楽しむ

美咲『日本のお菓子』 和菓子について、その種類、歴史、銘菓などを整理しまとめた電子書籍。著者は女子大生で、和菓子屋の販売員のバイトをしたことから、和菓子好きになったとのこと。 和菓子に少しでも関心のある人なら楽しめるだろう。評者はかねてから…

空前絶後の引用句辞典

横山徳爾『ロングマン英語引用句辞典』 加島祥造『引用句辞典の話』(1990)によれば、本書(1986)は日本初の「翻訳・英文引用句辞典」だという。だが、その後もその種の引用句辞典は出版されていない。ゆえに、空前絶後。 もっとも、本当のことをいえば、本…

アイヌ語に表れたアイヌの考え方

知里真志保「学問ある蛙の話」 著者の知里真志保(1909-1961)はアイヌ民族出身の言語学者。『アイヌ神謡集』を編纂した知里幸恵の弟。 アイヌ語に表れたアイヌの考え方を、例をあげ、分かりやすく、するどく述べる。アイヌ語の「ホロカ」(後へ戻る、の意)…

田山花袋がえがく恋のポリティクス

田山花袋『蒲団』 田山花袋の『蒲団』(1907)が日本の自然主義小説の方向を定めたといわれること、日露戦争の戦後文学の代表作であること、いづれも周知のことである。 この小説の基本的枠組について少しく考える。定式化するならば、この種のパワーポリテ…

日独を舞台に三人のアドルフの数奇な運命が交錯するミステリ

手塚治虫『アドルフに告ぐ 1』 手塚治虫(1928-89)の代表作のひとつ。「週刊文春」に連載された(1983-85)。 第二次世界大戦当時の日本とドイツを舞台とする長篇の歴史漫画。ユダヤ問題が含まれる社会派の作品。著者が暮らした神戸の描き方も興味深い。冒…

発表の準備に時間をかける

諏訪邦夫『発表の技法』 1995年刊にもかかわらず今も現行書であることに本書の価値がすけて見える。 もちろん、PC を利用したプレゼンテーションの方法などは、最新のソフトウェアについての概説書がいくらでもある。だけど、問題はそれ以前のところにある。…

キジ・ジョンスンの日本を舞台にした短篇

Kij Johnson, The Cat Who Walked a Thousand Miles (A Tor.Com Original) Small Cat という猫が主人公。都で廃屋となった大きな屋敷の庭に暮らしている。ある日、地震が起き、つづいて都じゅうが火事になる。 この出来事は Small Cat の環境に激変をもたら…

英語と生きた日本語との往来のために

中村保男、谷田貝常夫『英和翻訳表現辞典』 中村保男らによる『英和翻訳表現辞典』にはいろいろな種類がある。ここに取上げる最初の版(1984〔これは1978年から順次刊行されていた3巻本を一冊にまとめ増補したもの〕)以外に、200頁以上増補した『新編 英和…

'Joyce's Ulysses: A Guide' (iPad app)

2014年6月1日に、iPad 用のアプリとして 'Joyce's Ulysses: A Guide' が出た。註釈や音声をふくむすばらしいソフトウェアである。ジョイスの名作『ユリシーズ』をiPadで縦横に読むことができる。 原作の本文全文に加え、800点の註釈がついている。この本文は…

ジョイス『ユリシーズ』を原文で読むための註解書

米本義孝『読解「ユリシーズ」』 ジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』の作品前半部、第3,4,5,10,11 挿話を抜粋で取上げ、原文で読むための註解をほどこした書である。(本書の続篇『読解「ユリシーズ」〈下〉』は作品後半の第13,15,17,18挿話を抜粋…

紅茶はポットでいれるものだという、当たり前のことを丁寧に説く

堀江敏樹『紅茶の本―紅茶とじょうずにつきあう法』 堀江敏樹の『紅茶の本』は現在までに三つの版がある。初版(1989年)、増補改訂版(1992年)、決定版(2006年)の三つである。ここで取上げるのは増補改訂版である。 本書で度肝を抜くのは、冒頭に挙げられ…

世界の名歌をピアノ伴奏つきで39曲収録

『独唱世界名歌撰集―標準版 (No.1)』 世界各国の名歌のうち、日本でもよく知られた歌を39曲、ピアノ伴奏つきで収めた本である。 歌詞は原語と日本語訳詞と、両方が載っている。各曲の由来や特徴などについての説明はない。 本のサイズはA5判(148×210mm)で…

スコットランドとアイルランドの民謡72曲を解説とピアノ伴奏つきで収録

『世界民謡全集〈第4〉イギリス篇』 日本音楽書史上空前の大著『世界民謡全集』(全16巻)の第4巻(イギリス篇 II)。B5判(182×257mm)で各巻300頁ちかく、曲集としてはかなりの大冊。 編者門馬直衛はすでに日本語の定訳があるよく知られた曲についても、す…

イングランドとウェールズの民謡78曲を解説とピアノ伴奏つきで収録

『世界民謡全集〈第3〉イギリス篇』 『世界民謡全集』の第3巻(イギリス篇 I)。「イギリス民謡集」ははじめ1巻だけで完結するはずであったが、実際に編集してみたらとても1巻には収まらなくなったので2巻にしたとのことである。それほどイギリスには知られ…

What is Sean-nos?

Q:What is Sean-nós?A: Literally Sean-nós means ‘old way’. It is the oldest form of singing in Ireland. Sean-nós songs are usually sung unaccompanied. Excellent examples are the Irish language love songs: Úna Bhán, (Fair Úna), An Caisleán G…

近未来のミヤコと女剣士

恩田陸『雪月花黙示録』 時は近未来(おそらく21世紀後半)。所はミヤコ(平城京と呼ばれる)とナゴヤ(中部にある)。それを舞台に、ミヤコの凄腕の剣士、春日家のきょうだい(兄とふたりの妹)が、高校の生徒会長選挙をきっかけに、日本の再編をめぐる権謀…

Lumiere, 'Special Edition'

Lumiere, Special Edition (Sony, 2010) 美しい歌声の二人組。 アクースティック・ギター(Donogh Hennessy)を中心とする簡素で趣味のよい伴奏で、二人が時に一人で時にデュオで唄う。 その歌声はまっすぐで、ためらいがない。気持ちよいくらいに素直な唄い方…

芥川龍之介の短歌を読む

『芥川竜之介歌集』 大正3(1914)年から4(1915)年にかけての芥川龍之介の短歌や旋頭歌。 わずか二年間の歌を集めたものなのに、歌風は多彩である。 「紫天鵞絨」「桐」「薔薇」「客中恋」「若人」「砂上遅日」が収められている。これらの表題にはルビがな…

ラーサリーナ Lasairfhíona という名前の解釈

アイルランド・アラン諸島東島の歌い手ラーサリーナ・ニ・ホニーラ (Lasairfhíona Ní Chonaola) のラーサリーナ Lasairfhíona という名前について。 ソロ二作目 Flame of Wine (LNC002, 2005) のタイトルがそのまま意味を表しています。 結論から言えば、文…

電子書籍を出した三人の著者の鼎談

藤井太洋、梅原涼、十市社『セルフパブリッシングで「本」を出す』 セルフパブリッシングされた電子書籍が、たまたま編集者の目にとまり、紙の書籍として出版された三人の著者が、デジタル・セルフパブリッシングの現状、および商業出版されるまでの経緯を語…

Samba pra Vinicius

Toquinho, Quarteto em Cy, Chico Buarque, 'Samba pra Vinicius' クァルテート・エン・シ(シー)の映像がないかと探していたら1本見つけた。これが大当たり。 Samba pra Vinicius - Toquinho, Quarteto em Cy, Chico Buarque Poeta, meu poeta camaradaPoe…

浜崎が発するシャッター音は、被写体に呼びかける

豊島ミホ『銀縁眼鏡と鳥の涙』 豊島ミホの短編小説。カメラをめぐる高校生群像を、繊細な文体で描きだす。 文体そのものが青春期特有のふるえるこころを切取ったようである。すっかりファンになった。が、もはや豊島ミホは小説家ではない。いまは漫画家であ…

伯爵夫人の心の聖域とは

泉鏡花「外科室」(岩波文庫『外科室・海城発電』所収) 「夜行巡査」と並ぶ、鏡花の出世作。明治28(1895)年に発表された小説。 小説としては、ごく短いけれども、濃い。吉永小百合主演で映画化(1992)されたとき、その上映時間をつかって、「一瞬のよう…

その怪獣は八田義延という巡査なり

泉鏡花「夜行巡査」(岩波文庫『外科室・海城発電』所収) 鏡花の出世作のひとつ。職務にあまりに忠実な巡査を描く短編小説。 鏡花の作文技術の高さは早くも明白、隠れようもない。みごとな短篇。明治28(1895)年作。ディケンズもかくやと思われる、人物造…

シェーマス・ベグリが1枚まるごと歌う

Seamus Begley, The Bold Kerryman (IRL, 2015) 多くのファンの夢が実現した。 アコーディオンの名手として知られるシェーマス・ベグリが類稀な歌い手でもあること。アイルランド伝統音楽ファンの間で周知の事実だ。だが、彼はこれまでアルバム1枚でせいぜい…

泉鏡花が小説の文章を論じると

泉鏡花「文章の音律」 近頃の小説の文章に、音律といふことが忽にされて居る、何うして忽處ではない、頭から文章の音律などは注意もしてゐないやうに思ふ。 鏡花は小説の文章について、こう述べ、音律がゆるがせにされていると主張する。1909年に発表された…

お大事に Bless me

〔蔵出し記事 20060805〕 産経新聞の「ひもとくスヌーピーの50年」2006年8月4日付で載った分。 原文はこんな感じ。 谷川俊太郎訳は「はくしょん!」「お大事に」。説明コラムは 「お大事に」外国ではくしゃみをした人に「お大事に」って声をかける習慣がある…

Kindle本の価格のきめかたガイド

守本悠『わずか1000部で87万円稼ぐ電子書籍の作り方』 Kindle本の販売のため、価格の決定方法とプロモーションのやり方を考察した本。 電子書籍出版の指南書はいろいろ出ているが、類書にない角度だ。 Kindleストアで本を販売するには何を考えればよいのか。…

Zizou

etc

〔蔵出し記事 Thu, 20060706〕 ジズーはジネディーヌ・ジダンの愛称だ。 こういうフランス人には見えない Z で始まる名は、例えばザズーを想起させる。マグレブの伝統か。Z 会と呼ぼうか(笑)。 ジネディーヌ・ジダン (Zinédine Zidane) はアラビア語の名…

一気に読ませる迫力がある漫画

サン=テグジュペリ『夜間飛行』 サン=テグジュペリの『夜間飛行』 Vol de nuit を漫画化したもの。 読み始めたらやめることができない。 1930年頃の南米が舞台。航空郵便事業開拓期の人間模様を迫真のタッチで伝える。 1931年にフランスで出版。その年のフ…

英詩のマガジンにニーズはあるのだろうか

英詩の基礎知識のような本は以前は結構見かけたものだ。 けれど、最近は、とんと見かけない。需要がなくなったのか、読む人がいなくなったのか。 でも、世界的には英詩の読者は減っている気配はない。ジャック・アタリの本を開いても、エマニュエル・トッド…

La vita e come un viaggio

〔蔵出し記事 20060704〕 中田英寿選手の引退宣言のイタリア語版を読んで驚いた。日本語版より詳しい部分がある。ひょっとして‥‥。 このメッセージは、最初にイタリア語で書いた、ないしは着想したのではないか。タイトルが日本語だと “人生とは旅であり、旅…

空飛ぶムーミンはパパを見つけられるか

トーベ・ヤンソン『小さなトロールと大きな洪水』 ムーミン童話シリーズの最初の作品。 楽しい。あたたかい。ふしぎ。 こんな物語が1945年にかけたなんて。おどろいてしまう。 かいたのは物語の文章と絵。作者のトーベ・ヤンソン(Tove Jansson, トゥーヴェ…

Jazz Piano and Folk

ジャズ・ピアニストが弾くフォークソングは、フォークミュージシャン同士のカヴァーとはまた違う味わいがある。 とは、キース・ジャレットの 〈マイ・バック・ページズ〉 (Somewhere Before, 1968) 以来、多くの人が感じてきたことだろう。 このことをブラ…

皇后さまが感動された童話

新美南吉「デンデンムシノ カナシミ」(『新美南吉童話集』所収) 童話を再認識するのに遅すぎることはない。 「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ」 このことばを最初に読んだとき、雷に撃たれたかとおもうくらい、こころがゆさぶられた。ちいさな子が読…

空が青い ただそれだけで こんなに嬉しい

小原玲『アザラシの赤ちゃん』 動物写真家の小原玲が20年間撮り続けたアザラシの赤ちゃんの写真集。 見どころはアザラシの赤ちゃんが見せる愛くるしい表情の数々。生後わずか2週間しか見られない貴重な姿。 小原玲はもともと動物写真家ではなかった。戦争や…

相続税の改正に対応したガイド

天野隆『2時間で丸わかり 相続の基本を学ぶ』 相続税の基礎控除が平成27年1月1日から6割に引下げられた。課税対象者は当然増えた。本書は幸せな相続のために「節税」と「爽族」(争わない爽やかな相続を指す造語)に焦点を当ててまとめた本だ。 基礎控除額は…

選手の謙遜

〔蔵出し記事 20060621〕 同じ日に、敬愛するスポーツ選手たちから同じような謙遜の言葉を聞いた。 2006年NBA決勝戦でチャンピオンリングを手にしたマイアミ・ヒートのドウェイン・ウェイド。MVP に選ばれた直後のインタヴューで「まず、神にすべての賛美を…

彫刻のメタフィジクス

高村光太郎「ミケランジェロの彫刻写真に題す」 高村光太郎がミケランジェロを論じて宇宙論に至る文章。 詩人にして彫刻家の高村光太郎には「(私はさきごろ)」というミケランジェロの宗教を論じた文章がある。 これが宗教論としてはいかにも独断的で説得力に…

Radio Celt

ケルト音楽専門インターネット・ラジオ。サブチャンネルが 15 もある。伝統音楽や女性・男性アーティスト等々。米国の AccuRadio の局の一つ。知るかぎりでは2006年頃から続いている。その頃はサブチャンネルは6つだった。 ジャケットをクリックすると、amaz…

フロイトの『精神分析入門』『夢判断』をめぐる物語

ジークムント・フロイト『精神分析入門・夢判断 (まんがで読破)』 なかなか読まれない名作を「漫画」の形で親しみをもたせる「まんがで読破」シリーズの1巻。描きおろし。漫画化の担当を行うバラエティ・アートワークスは会社が沖縄県話国場にある。代表の兼…

Review of Jenna CD (Living Tradition May-June 2006 issue)

CD

Living Tradition 誌2006年5-6月号の Chris MacKenzie による Jenna Cumming, Kintulavig のレビューは稀有なものだ。同誌でこれほどの美しい賛辞を読んだ記憶がない。レビューワーが心の底から感動していることが文章に滲み出ている。私も同アルバムには心…

段落の長い良質の散文

第150回芥川賞受賞作の小山田浩子「穴」について(『穴』所収)。 ペソアがこんなことを言っている。「良い散文を書くためには、詩人でなければならない。というのも、よく書くためにはいずれにしろ詩人であることが必要だからだ。」 すると、小山田浩子は詩…

'Cois Abhainn na Séad' の比較

Máire Ní Cheocháin のアルバムで挙げた歌 'Cois Abhainn na Séad' は Elizabeth Cronin の録音(1947)もあり、CD 附きの本 The Songs of Elizabeth Cronin (Four Courts Press, 2000) に歌詞と楽譜とが掲載されている(89-90頁)。同 CD と本 CD または上…

聖女マリナの伝説を翻案した芥川龍之介の小説

芥川龍之介「奉教人の死」(新潮文庫『奉教人の死』所収) 熱心な芥川の読者であっても、さぞかし読みにくい小説ではないか。 けれども、キリシタン物に親しんでいる人や、ヤコブス・デ・ウォラギネ(イタリア・ジェノバの大司教)の『黄金伝説』を知る人には…

聴取録 Maire Ni Cheochain, 'Cu-cu-in'

ムースクリー(マスケリー)の歌唱伝統を知るのに恰好のシャン・ノース CD Cú-cú-ín をレビューする。 目次 データ 内容 総評 聞きどころ 入手先、試聴 映像 データ Máire Ní Cheocháin: Cú-cú-ín (Acamhadh Fodhla 2, 2006) rating: *** 1/2 sound quality:…

空飛ぶ生き霊(すだま)

大和和紀『源氏物語 あさきゆめみし 完全版(2)』 雲居を想う源氏の姿が印象的な第2巻。 いろいろあって光源氏の北の方(妻)、葵の上が世を去る。これからやっと夫婦の情も通うかと思えた矢先だった。それだけに、源氏は思い断ち切れず、雲をながめ、葵の…