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欽定訳聖書に関する最も詳細な註釈書


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Ethelbert W. Bullinger, The Companion Bible: King James Version (Kregel, 1991)



 1611年の欽定英訳聖書(the King James Version, the Authorized Version)は英語そのものの骨格の一部を成している。イングランド国教会の公式の英訳聖書であるにとどまらず、英米文学などへの影響も含め、英語の語法を知るためにも必須の資料である。それ自身が英語散文文学の精華でもある。

 その特有の言い回しや語法は、多くの場合、原語(ヘブライ語とギリシア語)の直訳的性格から来ている。さらに、特有の文彩や比喩的表現や修辞的技巧に基づく文体上の工夫は、聖書の構造を把握するためには知らねばならない。

 本書はおよそ百年前(1909–1922)にE. W. Bullinger(1837–1913)によって編纂されたものだが(一部は Bullinger の没後に仲間が完成)、今も、上記の点に関して、これ以上に詳しい註釈書はない。

 もちろん、聖書学はその後、大いなる発展をとげており、現時点では古くなった考え方も含まれてはいる。しかし、聖書の殆どすべての語句に関して、構造上の理解を助ける註釈をほどこした書の意義は計り知れない。編者として、自分の解釈を押しつけるのでなく、読者が自分で解釈ができるための助けを提供したものである。

 (日本の)英訳聖書の研究者の間でも、今は本書や Bullinger のことは忘れられているのではないかと危惧する。その 内容を凝縮した電子版 が公開されているが、本文の構造に関する修辞的技巧の部分は抜けているので、やはり印刷したものに当たる必要がある。