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現代詩の極北はロックする


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福間健二『彼女に会いに行く Selected Shorter Poems 1981~2013 vol.1』 [Kindle版]



 福間健二の『彼女に会いに行く』は詩集の未来を暗示する。

 明滅する声の交響に身をゆだねて、凄いスピード感で読み終わった━━ように感じたが、実際には一週間は優にかかった。そりゃそうである。短めとはいえ、五十一篇もの詩を、そう簡単に読めるわけはない。しかも、宮本隆司の写真が、章と章のあいだに、たっぷりはいっている。それらに見惚れたり、ある詩行が気になって立ち止まったり、とめどなくほかのことを連想したり。

 ほかのことというのは、いろんなことがふくまれる。勝手なことを書こうと思ったが、巻末の註に引喩がくわしく説明してあるので、やめた。ちょうど、エリオットの『荒地』の註がその後の学者の研究を一時期しばったみたいな今。

 だけど、それでも、言いたいことはいくつかある。

 シェーマス・ヒーニの詩がフォークしているとすれば、福間健二の詩はロックしている。

 小池昌代が今も詩集を出すときは自費だという意味のことを書いていたのはショックだったけど、だったら、こういう電子詩集の形もありではないか。

 ポストモダンの議論からすっかり抜け落ちているように見える現代詩からの逆襲は、案外、こんなところから始まるのではないか。そんな予感がする。