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水平思考家どうしの一騎打ち――松岡圭祐の特等添乗員シリーズ第4作


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松岡圭祐『特等添乗員αの難事件 IV』角川書店、2013)

 

 特等添乗員αのシリーズ第4弾。主人公の浅倉絢菜(あさくらあやな)とフィアンセ、観光庁の壱条那沖(いちじょうなおき)との間にまたも深刻な危機が訪れる。それは那沖の婚約者だと名乗る藍岐瑠華(あいきるか)の出現によるものだった。

 一方、絢菜と同じ水平思考(ラテラル・シンキング)を駆使する無銭旅行常習者が日本にやってくる。韓国籍のミン・ミヨンだ。ニックネームを”北国の女王”という。準国際指名手配を受けるほどでありながら、まったくつかまらない。那沖は本省の国土交通省からミヨンを一日も早く国外へ閉めだせと指示を受ける。

 ミヨンは韓国側が捜査に熱心でないという不可解な事情がある。その無銭飲食、無銭旅行の手口は常識的論理では発想が難しい方法が使われている。横浜から出発し、いまは千葉県茂原市北塚に潜伏しているとの情報を得て急行するが、ミヨンは忽然と姿を消していた。

 なぜこの場所なのか。北塚のあたりは日本のヨウ素のほとんどを生産するところだった。それがミヨンのルート選択に大いに関係する。

 さらに、舞台はハワイのオアフ島に移る。添乗員として同島に向かった絢菜と、ミヨンを追いかけてやってきた那沖と瑠華。この四者が複雑にからむ。

 謎解きのおもしろさと、絢菜をめぐる恋のゆくえのドキドキ、さらに絢菜とミヨンというラテラル・シンカーどうしの息づまる対決など、さまざまな要素を巧みに織りこんだ極上のエンタテインメント小説。シリーズ中でも屈指の作品。シリーズの第4作だけど、ここから読んでもまったく問題なく楽しめる。