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ラテラル・シンカーの絢奈がスランプ!?


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松岡圭祐『特等添乗員αの難事件II』角川書店、2012)

 

 水平思考(ラテラル・シンキング)の添乗員浅倉絢奈が活躍する「αシリーズ」の第2巻。

 本書は受験生とその親の合宿ツアーの添乗員としての業務で幕を開ける。途中のバス通過の難所も、宿舎到着後のさまざまなトラブルも、瞬時の閃きで順調に解決していった一日の終わり、真夜中頃にフィットネスセンター周辺の見回りをして眠りにつく。

 このところ調子がよすぎて、同僚の添乗員・樹里は心配になっていた。翌朝、はたしてフィットネスセンターに警察が来ており、中にあった貴重品ロッカーが荒らされ、ツアー客の貴重品が盗まれていたことが判る。前夜、絢奈は見回り中に卓球クラブの男たちと出会っていたが、その者たちが実は窃盗団だったことが判明する。絢奈は疑念をいだかなかった自分に愕然とする。自らの思考の精度に反省を迫る事態なのか。

 そのような事件に始まり、絢奈が得意の水平思考に自信を失い、スランプに陥る危機のなかで、この思考法そのものについての考察も深められてゆく。その部分がミステリ仕立てのストーリーと同じくらい面白い。

 通常の論理的思考による解決と水平思考による答えとを比較した考察を一つ引く。絢奈の個人教師をつとめる能登の絢奈に対する言葉だ。知識にない答えは導きだせないのではとの絢奈の疑問に答える。

たしかに解決手段を求めるのなら、自分が知る以外の教養、前例や事例、専門家の頭のなか、文献などをあたるべきでしょう。すなわち解決手段とは問題の外に存在します。けれども水平思考による答えは、問題のなか、すでに知っている範囲内にあるのです。あなたに必要なのは情報収集ではありません。とっくに把握していながら、見落としている近道をこそ探すべきです。

 この能登の助言を受け、絢奈はじょじょに自分の思考を意識的にコントロールする方法を探ってゆく。閃きが降りてくるのを受動的に待つだけでなく、能動的にラテラル・シンキングを発動させるためのきっかけになる呪文を能登は教える。

疑問が頭に浮んだとき、まずそれを文章化します。そのうえで『なぜ』もしくは『どうして』を『何のために』と置き換えてください

こうして、ラテラル・シンキングを阻む固定観念を排し、常識を疑う水平思考に磨きをかけ、スランプの脱出を図ってゆく。<きょうは引き籠もりでも、明日は立派な社会人かも。>の絢奈の楽天思考は実を結ぶか。

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