チベットの民話「犬になった王子」を元に宮崎が映像化した絵物語。西アジアの原生地から世界へ伝播したという大麦をめぐる物語。チベットは世界で唯一大麦を主食とする国。従って、民話の内容(王子が西へ向かい竜王から麦の粒を盗み出す)は歴史に符合する。これをアニメーション化することは宮崎の夢だったらしい。宮崎の思想の原点に通じるような大きな物語だ。
なお、原作を読むと、穀物の種を盗み出すのは、実際には、ほらあなにすむ蛇の王の玉座の下から。蛇王が湖へ竜王を訪ねてゆくほんの僅かの隙に盗み出す。それから、原作では、チベットのプラ国の王子の名はアチョ。
〔追記〕
絵本版「犬になった王子」の絵を担当された後藤 仁さんから、ご丁寧な Tweet をいただいた。大変ありがたい。
民話「犬になった王子」の絵本版『犬になった王子 チベットの民話』(文・君島久子、絵・後藤 仁 / 岩波書店)も合わせてご覧いただけると面白いです。よろしくお願い申し上げます。日本画家・絵本画家 後藤 仁 https://t.co/O5z1OTZ9tz
— 後藤 仁(日本画家・絵本画家) (@JINGOTO) January 8, 2016