Tigh Mhíchíl

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Voice, or Mountain Music 1920s-30s


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〔蔵出し記事 20040109〕

 とんがりやまさんのブログ記事「これもまた“ボーダー・ミュージック”なのだ。」で見つけたマウンテン・ミュージックの歴史的録音へのコメント。声と言語との関係について。あるいは TV が及ぼす言語の変化について。

音楽が自分の声の届く範囲で生きていた時代から、テクノロジーの力を借りて想像もつかない場所にまで届くことを前提にした時代へ

とあり、考える。これは恐らく言語(=米語)の変質を生んだのではないか。

 つい最近(2004年1月)、コナマラのカーチーン Cáitín さんという女性から興味深い話を聞いた。彼女は1960年頃、米国に移住し、7年後に帰国したのだが、アイルランド語が変質しているのに気づいたというのだ。自分が慣れ親しんだアイルランド語から、人工的な匂いのするアイルランド語へ。その変化にとても驚いたという。

 彼女によれば、考えられる原因は TV の普及だ。TV が登場して、全国に RTE のアナウンサーのアイルランド語の声が届けられ、みんながそれを聞くようになった。結果、自分の故郷のアイルランド語まで変わってしまって、耳にしたこともないアイルランド語をみなが話していたという。

 ぼくは、このクリスマス休暇(2003年12月-2004年1月)に、ドネゴールとコナマラの二つのゲールタハト(アイルランド語使用地域)に行ってきたが、このカーチーンさんの話すアイルランド語が一番好きだ。彼女に質問されれば、不思議とアイルランド語が口をついて出てきて答えられ、会話が成立するのだ。他の人のアイルランド語だと、どうもテンポが合わない。なんとも不思議な経験だった。

 附言すると、ラジオとテレビとは違う。今でも、TG4 (アイルランド語 TV)ではアイルランド語の間違いがずいぶん多いという。対して、RnaG (アイルランド語ラジオ)はましだという。