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水の結晶写真――「形態共鳴」仮説のひとつの例、汎ヨーロッパ的なバラッド


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江本勝『水は答えを知っている―その結晶にこめられたメッセージ』サンマーク出版、2001)

 

 文章と水の結晶写真とを収める。

 科学者で似た結論に達した人にルパート・シェルドレイク博士がある。共鳴が音だけでなく出来事でも起きるとの理論(「形態共鳴」の理論)である。正確には「形成的因果作用の仮説」という。

 本書では次のように説明される。

何度か同じような物事が起こると、そういう出来事の起こる「形の場」ができ、この「形の場」に共鳴すると、同様の出来事が再び起こりうると考えました。このときの「形の場」とは、エネルギー的な情報ではなく、たとえば家が建てられるときの設計図のようなものである、というのです。(134頁)

  その実例としてグリセリンが発見されてから何十年後に、突然一樽が結晶を作り始め、しばらくすると、全く離れた場所のグリセリンも結晶を作り始め、いまではグリセリンは17℃以下で結晶するのは常識となった。この19世紀初めの出来事はこの理論で説明がつくという。

 一度できた「形態形成場」の伝播は、空間や時間を超えて起こるとされる。日本でも同理論の紹介書がある(喰代栄一著『なぜそれは起こるのか―過去に共鳴する現在 シェルドレイクの仮説をめぐって』、サンマーク文庫、2001)。この書については「勝間和代オフィシャルメールマガジン」2013年1月17日号でも紹介されていた。

 〈これほど、賛否が渦巻く仮説は少ない〉と述べつつも、勝間は次のように述べる。

要は

 

「一度起こったことが、その後起こりやすくなるのは、それは場が学習をしているからだ」

 

というものです。本の中では、迷路を抜けるネズミの実験などで、その仮説の検証がさまざまに行われています。

 

迷路をネズミが抜ける実験をすると、その子孫がその迷路を抜けやすくなるのはなんとなくわかるのですが、まったく別家系の、その学習をしたネズミとはまったく関係ないネズミも、迷路をぬけやすくなるのです。

 

しかも、それは、実験をする場所が近くなくてもいいのです。

 

これを本の中では「形の共鳴」と呼んでいます。

 関連する本を挙げておくと、

  • Rupert Sheldrake, Seven Experiments That Could Change the World: A Do-It-Yourself Guide to Revolutionary Science (Riverhead Books, 1995) 〔ルパート シェルドレイク (著)、 田中 靖夫 (翻訳) 『世界を変える七つの実験―身近にひそむ大きな謎』(工作舎、1997)〕
  • ルパート・シェルドレイク (著)、竹居 光太郎 (翻訳)、幾島 幸子 (翻訳) 『生命のニューサイエンス―形態形成場と行動の進化』(工作舎、1986)
  • ルパート シェルドレイク (著)、田中 靖夫 (翻訳) 『あなたの帰りがわかる犬―人間とペットを結ぶ不思議な力』(工作舎、2003)
  • ロンダ・バーン (著)、山川 紘矢 (翻訳)、山川 亜希子 (翻訳)、佐野 美代子 (翻訳) 『ザ・シークレット』(角川書店、2007)〔DVD 'Secret' (Prime Time Productions, 2006)〕

などがある。

 身近なところでは、飼っているトイ・プードルは玄関に人がやってくる数秒前(足音が聞こえる少し前から)に気づくことを、評者は何度も経験している。このことは海外のニュース番組でも観たことがある。

 バラッドという文学ジャンルがある(物語歌の一種)。汎ヨーロッパ的なジャンルであるが、時代や国や言語を超えて、似た主題が、似た仕方で物語られるということは、枚挙にいとまないほど多数の実例がある。バラッド研究史ではこのことの説明がついていないというか、知る限りでは、かつて説明を試みた人さえない。バラッド研究にたずさわる者の間ではあまりに常識的な風景として、生れる前から存在し、今後も存在することに何の疑いもない。