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万能鑑定士Qともついにお別れ――垂直思考と水平思考の豪華な共演が人の営みがある日本最南端の島で


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松岡圭祐『万能鑑定士Qの推理劇IV』角川書店、2013)

 

 秋田新幹線E6系電車も登場する2013年刊。

 万能鑑定士Qのシリーズには古いほうの事件簿と、この新しいほうの推理劇とがある。本作は両シリーズを踏まえた最終作のような作品になっている。推理劇としてはひとつまえの第3巻をふまえている。また、事件簿としては万能鑑定士Qが誕生するそもそものきっかけとなった大事件(力士シールとハイパーインフレ)を扱う第1巻~第2巻とをふまえている。特に、事件簿の第1巻~第2巻をこれから読もうという人は先にこの推理劇IVは読まないほうがよい。事件簿のほうの結末をふまえているので。

 いつもはこのシリーズは、初めて読む人にも親切な説明が織り込まれているのだが、本作は以上のような特殊な性格上、そのような配慮は殆どない。従来の作品の読者には懐かしさを感じさせるとともに、もう後がないという切迫感のようなものもただよう。これで万能鑑定士Qの凜田莉子は見納めとなるのだろうか。

 凜田莉子の鑑定オフィスが何者かに荒らされる。内側には無数の力士シール。そこにはまぎれもなく謝花(じゃはな)兄弟の筆致が。また、店を閉めろとのメッセージも記入されていた。そこで、莉子は兄弟がかつて暮らしていたチープグッズ本店に向かう。莉子が初めて勤めた店であり、莉子伝説が始まった場所でもある。

 その直後、莉子は「週刊角川」編集部から依頼を受け、ある意匠を見せられる。新会社 KADOKAWA のトレードマークだった。しかし、それは自分たちの作品の盗作だとの伝言が謝花兄弟から届いていた。関係者にとって冷静ではいられない非常事態となった。果たして、本当に兄弟が動き出したのか。

 一方、莉子は地中海旅行(本シリーズ第3巻)の際のおばあからの借金が返せず、おばあが相談役をつとめる八重山運送本社(石垣島)の検品部への就職を要請される。

 ところが、この不可解にふくらんだ借金や、オフィスへの攻撃などは、すべて莉子個人を破滅させるための敵の攻撃だった。いったい誰がそんな攻撃をしかけてきたのか。それは詐欺師の総元締とされる人物だった。シリーズ最終章にふさわしい壮絶な戦いの舞台は、東京から実家がある波照間島へと移る。万能鑑定士Q凜田莉子は家族や島民を守るために戦うことになる。まさに、「人の死なないミステリ、最後の謎解き勝負」だ。

 そこには、小笠原悠斗はもちろん、雨森華蓮にくわえて、なんと特等添乗員αの浅倉絢菜やフィアンセの壱条那沖まで登場する。その会話は『特等添乗員αの難事件 IV』をふまえている。まるで、Qとαの集大成のおもむきだ。Q & α。ロジカル・シンキング(垂直思考、論理的分析的思考)とラテラル・シンキング(水平思考)の豪華な共演だ。これが面白くないわけがない。

 

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