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読みごたえのある離島ミステリ


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アン・クリーヴス『青雷の光る秋』(創元推理文庫、2013)



 <シェトランド四重奏>(Shetland Island Quartet)と呼ばれる、アン・クリーヴズの犯罪小説シリーズの第4作(2010)。このあとに Dead Water (2013) が出ている。第5作以外は創元推理文庫から玉木亨訳で出ている。訳文は申し分ない。長旅などに持ってゆくにはもってこいの読みごたえのあるミステリだ。島で突然おきる殺人事件の謎にたちむかうペレス警部が主人公。

 シェトランド島はスコットランド北東にある島で、シリーズの本作以外はそこが舞台だ。本作だけが、シェトランド島の南にある離島、フェア島を舞台とする。Fair Isle (フェア島)の綴りをみると英語の fair に関係があるように思ってしまうが、実際には古期ノルド語に由来し、「羊の島」の意らしい。

 シェトランド島は北欧とスコットランドの両方の伝統文化の要素がある島として知られ、音楽伝統の面でシェトランド・スタイルのフィドルが非常に有名だ。名フィドラーのアリ・ベーン(Aly Bain)は日本でもファンが多い。

 本書は、そんなシェトランドの伝統文化の香りをちりばめつつ、第5章にはいると急に不穏な空気がただよいはじめる。あたかも激しくなる嵐に呼応するかのように。そこから徐々に不穏さは増してゆき、ついに第36章あたりから急加速し、衝撃的な展開をする。

 見どころは、天候悪化により本島と隔絶され、科学捜査や大規模捜査ができない中で、たまたま帰郷していた警部が単身でねばりづよく進める捜査と、珍しい渡り鳥を求めて島にやってくるバードウォッチャーたちの一種異様な心理との、からみだ。約450頁あるが、登場人物たちや風景を丁寧にえがいて、まったく飽きさせない語りは見事という他ない。


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