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現代の暑さ対策(ピーキング能力)


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 マラソンの増田明美さんが今日付の産経新聞朝刊に興味深い話を書いている。暑いところでの本番を前に暑さに順応させた練習を行うのは逆効果という話だ。

増田明美 いざ炎暑のアテネ


 暑い、暑い、暑い日々が続いている。間近に迫ったアテネ五輪も、猛暑のなかでの開催。マラソン選手たちはどう対処しようとしているのだろうか。
 「暑さ対策なんてしないよ」と話すのは野口みずき選手の藤田信之監督。今、彼女らはスイス・サンモリッツで最終調整を行っている。平均気温が14−15度。監督の考えは「厳しい条件下のマラソンだからこそ体調をベストにもっていくことが大事」。つまり、スタートラインに着く前に消耗しては意味がない、ということだ。


 これは抜群のピーキング能力(本番に向けた調整能力)を誇る男子世界最高記録保持者のポール・テルガト選手(ケニア)と全く同じ見解だ。「心身の状態が整えば、気象条件などは問題ではない。最高の体調ならどこででも勝てる」と彼は言う。


 これに比べると、二十年前の私たちはなんと愚かだったことか。(女子では)前例がなかったのだから仕方ないが、この考えとは違う暑さ対策でロサンゼルス五輪に挑んだ。「ロスの暑さに対応するために、それ以上の暑さに順応させよう!」と、ニューカレドニア宮古島、沖縄などで体を追い込み、体感温度35度以上のなかで27−28度の本番レースに向けた練習を積んだ。


 その結果、瀬古利彦さんはじん臓を悪くし、宗兄弟も本調子とは言い難く、私も調子は最悪だった。皆スタート以前に消耗し切ってヘロヘロになってしまったのだ。


 そんな極端ではないが、暑さに少しずつ順応させようというトレーニングは形を変えて残っている。油谷繁選手の暑さ対策は、「気温の変化に体を対応させること」と坂口泰監督は話す。例えば、練習場所を冬のニュージーランドから夏の日本へ。またホームグラウンドの広島から北海道の網走へ移動する。低レベルの温度差を体に覚えさせることで鍛えていくのだという。


 暑さ対策も既製品からオーダーメードの時代になってきた。(ますだ・あけみ=スポーツジャーナリスト)

 (引用文中、文字フォントの大きさを1ポイント上げて太字にしたのは引用者の処理。以降、この種の処理はいちいち断りません。)

 体験をふまえているだけに重みがある。このピーキング能力(本番に向けた調整能力)の考えかたは他の分野にも応用が利くのではないか。

 この場合の peak は「最高点に達する」という意味の動詞だろう。全く同じ形で、peak というおそらく別の動詞があり、そちらは「やせる、やつれる、衰える」の意であり、peak and pine の語句が(シェークスピアの『マクベス』起源で)よく知られる。素朴に考えれば、ピークに達すればあとは衰えるだけということか。しかし、英語の辞書は両者は別起源とする。OED ではこの衰えるほうの peak を動詞の第一に挙げており、こちらのほうが英語としては古い。