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one literary dialect


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 Robin Flower, The Irish Tradition (1947/94), p. 124:

The literary men of medieval Ireland were no stay-at-homes, they passed readily from the house of one chieftain to another, from monastery to monastery, and appear to have both spoken and written one literary dialect. This is true even of Scotland, which through the whole medieval period was in literary matters entirely under Irish domination.

 ここで Flower が問題にしているのは15世紀頃の話で、アイルランド中はおろかスコットランドに至るまで同じ literary dialect いわば雅語、雅言たるアイルランド語を用いていた。それは17世紀頃まで続いたと考えられる。その一つの言葉、共通語を指してゲール語というのは至当。(19-) 20世紀以降の言語についてその語を使うのとは訳が違う。ただ、この時代を直接に扱うアイルランド語辞書がない。OED のような歴史的原則で編纂された辞書が待望される所以。

 歴史上、このような地位を有した言語といえば12-14世紀頃の南仏〜北伊地域のプロヴァンス語(オック語)が思い浮かぶ。ダニエルを始めとするトゥルバドゥールが作った詩の精華が vernacular (地方語、現地語、日常語、俗語)としてダンテの詩論 De vulgari eloquentia の最高の例となり『神曲』を生み出し、マルコ・ポーロがこの言語で『東方見聞録』をあらわした。