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「緩和期癌」(日野原提言)


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 「末期癌」に代わるよい呼称を考え続けた日野原重明さんが一つの結論に達しました(<「緩和期癌」を広めたい>「92歳・私の証 あるがまま行く」朝日新聞9月25日付)。

 「緩和期癌」という言葉です。

 日野原さんはこう書きます。

 残されたわずかな年月でも大切に扱われ、もう少し生きたい。少しでも安らぎが与えられるように、優しくタッチして欲しい。治療の望みがない癌患者もそう願っているはずです。〔中略〕

 「緩和ケア病棟」という呼称を最初に使ったのは、カナダのロイヤル・ビクトリア病院のB・マウント医師〔Dr. Balfour Mount〕でした。英語では Palliative Care Unit と書きます。

 Palliative は、「マントをかける」という語源を持つ Palliate (痛みなどを一時やわらげる)に由来します。寒さに震える人に自分のコートを脱いでかけてあげるような優しい看護。それを受けられる場所を「Palliative Care Unit (心身の苦しみを緩和する病棟)」と呼んだのです。〔中略〕

 「治癒させることは時にしかできない
 苦しみを和らげることはしばしばできる
 しかし、いつでもできることは患者の心に慰め、支えを与えることだ」
 (〔16世紀のアンブロアズ・パレ Ambroise Paré が当時、大抵の病気は治せると傲慢に考えていた医師に宛てた言葉〕日野原抄訳)

 考えているうちに、「緩和期癌」という優しい呼称が私の頭に浮かびました。これからは、末期癌を「緩和期癌」と、心の癒やしの期待を祈りつつ行う医療を「緩和期ケア」と改名するよう医学界に提言していきたいものです。

 かつて、成人病に代わる「生活習慣病」という、病気の原因を明らかにした呼称を考え、今ではそれをすっかり定着させた日野原さん。この言葉も広まるとよいですね。