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談話分析のクラシック


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Brown and Yule, Discourse Analysis (Cambridge UP, 1983)



 談話分析(discourse analysis)の古典。出版後30年たつが今もこの分野の基本的図書であり続けている。


 英作文について真剣に取組む人が、たとえば上田明子の良著『英語の発想』で談話分析の用語に出会ったとする。シーム(theme)とリーム(rheme)などのキーワードに。興味を惹かれてさらに調べたくなったとき、どうするか。同書には残念ながら手がかりがない。参考文献が挙げられていないから。


 そうなると、談話分析について一から自分で探さなければならない。そんなとき、最初に手に取るとよいのが本書だ。


 本書でシームとリームはどう説明されているか。theme については 'the starting point of the utterance' (「発話の出発点」)と、rheme については everything else that follows in the sentence which consists of 'what the speaker states about, or in regard to, the starting point of the utterance' (文の残り全部。「発話の出発点について、またはそれに関して、話者が述べること」から成る)と書かれている。引用符号が附いているのは、これが V. Mathesius の 1942年の論文からの引用だから。Mathesius というのはチェコ言語学者。

 そんなに昔からこの用語が使われていたのかと驚くが、それはともかく、こうした説明を恐らくふまえて上田明子は「シームとは,文の最初に来る語ないし語句のひとまとまり」であると、またリームとは「文の残りの部分」であると説明する。

 文法でいう主語と述部以外にどうしてわざわざ別の二分法を導入するのか。それはシームが主語と一致しないケースがあるから。情報の流れというレベルで見るときのシームとリームがあれば、文法と情報の両面で談話をうまく分析することができる。

 そのことを実例で理解するのに『英語の発想』という本はまことに好適なのだが残念ながら入手しにくい。現状では本書のような理論書などを手がかりに考えてゆくしかない。

 日本では英単語や英文や英会話などについての本は掃いて捨てるほど出ているが、語や文より上のレベル、つまりパラグラフを構成する談話(discourse, 話されたり書かれた複数の文の連続体で一つのまとまりを成すもの)について実践的に指南した書はほとんど見られない。これでは、パラグラフ・ライティングといくら言ったところで掛け声のみに終わりはしないかと憂える。語 < 文 < 談話 < 段落の階層で最も実践的訓練を必要とする談話の部分が抜け落ちるからである。


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