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ラサリーナ・ニホニーラの経歴


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 アイルランドのアラン諸島の東島出身の女性歌手ラサリーナ・ニホニーラ(Lasairfhíona Ní Chonaola)の経歴について。

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 まず、コニーラ(Conaola)はコナマラ西部に多い姓らしい。この姓についてはなかば伝説じみた話が伝わっている。ホニーラとなっているのは、「ニ」(娘)に続くことからくる文法上の軟音化 (lenition)。

 ラーサリーナ(ラサリーナ)(Lasairfhíona)というのは現在女子の名として人気があるという話もあるが、会ったアイルランド人でこの名を聞いたことのある人はいないので、真相は不明。

 語源については lasair が炎の意、fíon がワインの意であることから、「炎のワイン」(flame wine) とか「燃え立つ(ように赤い)ワイン」(flaming wine) などの解釈があるようだが、はたしてどうか。軟音化を起こしていることからこれは属格ととり、「ワインの炎」(flame of wine) ととるのが文法上は至当ではないか。本人がオフィシャル・サイトで説明しているところによると、古いアイルランドの名前で 'Flame of Wine' の意だとしている。なお、「ラーサリーナ・ニ・ハニーラ」と表記する人もある。本人は英語圏向けには Lah-sah-reena Nee Huneeluh と発音を説明している。

 いずれにせよ、ラーサリーナ・ニホニーラ(Lasairfhíona Ní Chonaola)とは、オ・コニーラの娘ラーサリーナということだ。この名前はもちろん未婚の娘の名前である。父の姓は Ó Conaola となるはずである。

 ラーサラリーナの父はその通り、Dara Ó Conaola といい、作家である。『小さな英雄』 An Gaiscioch Beag (1998)、『海上の使命』 Sea Mission / Misiun ar Muir (2000) などの作品が知られている。

 ラーサリーナは生まれはダブリンだが、育ったのはアラン諸島 (Oileáin Árann) の東島 (Inis Oírr) だ。16世紀末にエリザベス一世が創立した大学トリニティ・コレッジ・ダブリンを卒業後(ケルト学専攻)、同大学でアイルランド語を教えていた。

 ラーサリーナが音楽シーンに登場するのは1998年、まだ彼女が20代半ばの頃である。アイルランドのさまざまなテレビ番組で歌った経験はあったが、録音としては同年リリースされたエクトル・ザズーの《ライツ・イン・ザ・ダーク》が最初である。これはたちどころに注目を集めることとなり、「アイリッシュ・タイムズ」紙で1998年のベスト・アルバムの一つにえらばれた。現代のシャン・ノース・シンガーが保持しているアイルランド聖歌の伝統をモダンな編曲で提示してみせた、実験的で意欲的なアルバムである。ピーター・ゲイブリエル坂本龍一やカルロス・ヌーニェスなどの参加ミュージシャンの多彩さは別として、アルバムの本質はアイルランド聖歌をいかに現代的な解釈で聞かせるかというところにある。その点では、シンガーこそがこのアルバムの主役である。

 同アルバムに参加した三人のシンガーの一人ラーサリーナは小さい頃から歌に親しんでいた。1998年7月9日付の The Galway Advertiser に載った発言によると、歌い始めたのは「ごく小さい頃」('quite young')で、「小さい子どもの頃、いつでも独りで歌うのが好きだったの。父は伝統歌を数曲教えてくれたけど、結局、島を定期的に訪れていた有名な伝統歌教師トリャサ・ニヴィラーンに歌のレッスンを受けにやってくれたわ。」('I was always happy to just sing by myself when I was a small child. My father taught me several traditional songs, and eventually sent me to singing lessons with the well-known traditional singing teacher Treasa Ni Mhiolláin who used to visit the island regularly') という。

 海外での公演経験としては、1998年夏のモントルー・ジャズ・フェスティヴァル(スイス)、2002年夏のフェスティヴァル・アンテルセルティク・ドゥ・ロリアン(フランス・ブルターニュ)がある。(Her performances abroad include the prestigious Montreux Jazz Festival in Switzerland in 1998 and Festival Interceltique de Lorient, Bretagne, in 2002, where her solo album An Raicín Álainn was first released on 8 August.)

  器楽曲として知られる「東島」'Inis Oírr' に歌詞をつけてラーサリーナが唄う 'Inis Oírr in Inis Oírr'. 'Inis Oírr in Inis Oírr'. ソロ・デビュー盤の An Raicín Álainn (2002)のトラック13に収められている。トマス・ウォルシュ作の有名な曲におそらく世界で初めて歌詞をつけて歌ったもの。すべてが聞き物であるこのアルバムでも絶品。詩は Ethna Carberry 作。

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