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ローマ人の力の源は浴場(テルマエ)にあり


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ヤマザキマリ『テルマエ•ロマエI』

 

 古代ローマの文明と日本の文明とを時間旅行する浴場技師ルシウス・モデストゥスの抱腹絶倒の物語。

 これからローマ文明の末裔の文化圏(欧米など)へ留学する人や、そういう人が家族にいる人は、本第1巻だけでも、騙されたと思って読むことを心からお薦めする。日本について何か思い出したときに、必ずやその原風景の一部となることであろう。漫画だと思って見逃すにはあまりに惜しい書ですよ。

 「ローマの浴場」(Thermae Romae)という題名のセンスがまず抜群である。訳が分らないなりに、高尚なひびきがして、その実、読んでみるとずっこけんばかりの面白さ。これはヒットしない訳がない。

 入浴にかける情熱が古代ローマ人も、そしてもちろん日本人も、半端ではないことが本作を読むとよく分る。そして、その情熱は細部に、入浴にまつわるさまざまの小物や周辺の事物に反映するのだ。その情熱の襞に分け入ってゆく感覚がえもいわれず楽しい。

 作者はポルトガル在住らしいが家に浴槽がなく、その渇望を本作をかくことで癒している面もあるのだろうと想像する。(今は米シカゴ在住らしい。)