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祝 ベネディクトゥス16世誕生


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ヴァチカンの公式サイトのトップ見出しに

HABEMVS PAPAM
BENEDICTVM XVI

とある。新ローマ教皇ベネディクト16世(Benedictus XVI)の誕生に、心からお祝いを申上げます。2005年4月19日の午後の投票(投票としては前日のニ回、当日の午前に続く第四回目)で、*1 ヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿(78)が第265代ローマ教皇に選出された。(photo: Rai)
     


なお、上の教皇庁サイトの文面のラテン語について補足。「我々はベネディクトゥス16世を教皇として戴く(我々は教皇ベネディクトゥス16世を得た)」の意。*2 ヴァチカンの新聞「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」(L'Osservatore Romano)が出した号外も同種のラテン語文を見出しに使っていた。*3 これは特別なことではなく、かつて同紙を購読していたぼくはよく知っているが、ラテン語は記事中にしょっちゅう現れる。ヴァチカンの公用語は今もラテン語である。前回の教皇選出の時も、口頭での公式発表はラテン語だった。


さらに、補足。イタリア国営放送の Rai は速報で 'Habemus Papam' (教皇が決まった)と流したようだ(未確認)。教皇選出時の決まり文句である。教皇庁発表の公式声明文は次のようなものである。

Annuntio vobis gaudium magnum;
habemus Papam:


Eminentissimum ac Reverendissimum Dominum,
Dominum Josephum
Sanctae Romanae Ecclesiae Cardinalem Ratzinger
qui sibi nomen imposuit Benedictum XVI

つまり、「大いなる喜びをあなたがたに告げます」(Annuntio vobis gaudium magnum)から始まる文である。なぜ大いなる喜びかといえば、前教皇逝去以来、教皇位が空位であったのが埋められたためである。「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」号外の言葉を使えば「ペトロ(の後継者)〔=教皇〕が(再び)我らと共にある」(Pietro è con noi.)からである。そのあと、ラツィンガー枢機卿の名に敬称がいろいろ附き、最後に彼は「ベネディクト16世とみずから命名した」(sibi nomen imposuit Benedictum XVI)と書かれている。


第一次大戦期に在位していたジェノヴァ出身のベネディクト15世のことが初めから念頭にあって、その平和への意思を尊重し継承したいという思いがあったのだろう。だから、「教皇名は何とされますか」と訊かれ、こう答えたのであろうと推測する。その意味では、コンクラーヴェ参加の枢機卿たち(の少なくとも有力候補者)は選出された場合にみずから決める教皇名は予め心に秘めていたに違いない。


4月17日(日)は「良い牧者の主日」であったが、ここに世界のカトリック教会は「良い牧者」を得たことになる。実際、彼は「ドイツにおける神の羊飼い」("God's German Shepherd")と呼ばれてきた。ちなみに、新教皇の神学博士論文(1953)の論文題目は「聖アウグスチヌスの教会論における神の民と神の家」である(カトリック中央協議会お知らせ から)。*4

*1:三回目という報道もある。投票の公式記録は封印されるため、真相は不明。〔付記〕 その後の報道によると、前日一回、当日三回行われたらしい。結局、四回目の投票で決した。

*2:habemus は habere の一人称複数現在形。ここは二重の対格をとっていると解する。そう取れば、<人>を<地位>とするの意。

*3:この号外は PDF ファイルとして こちら からダウンロードできる。

*4:彼が神学博士(Doktor der Theologie)を取得した博士論文(Arbeit)のドイツ語原題は こちら によると "Volk und Haus Gottes in Augustins Lehre von der Kirche" である。こちら によると、同博士号はミュンヘン大学から取得したものである。なお、この後者のウェブサイトは、2000年8月に設立されたラツィンガー枢機卿のファン・クラブ(!)のサイトである。ブログもある。