シェーマス・エニスの収集日記 'Mise an Fear Ceoil': Séamus Ennis - Dialann Taistil 1942-1946 (Ríonach uí Ógáin 編, Cló Iar-Chonnachta 刊、2007) 。
1942-1946年にかけて、ドネゴール、メーヨー、コナマーラ、クレア、リムリックの各県で伝統音楽の収集を行った際の日録。大戦期のアイルランド社会の様子を窺い知ることもでき、興味深い。
シェーマスは23歳にして Irish Folklore Commission から収集官に任命され、アイルランド各地の伝統音楽や歌を収集して回った。
この500頁近い本には、当時の写真や楽譜などがふんだんに挿入され、見ていて実に想像力を刺激される。重い本だが、20世紀のアイルランド伝統音楽の研究家には必携の本だろう。
全篇アイルランド語で書かれているが、中級程度のアイルランド語の力があれば十分に読みこなせる。文章は簡潔で短く、どちらかと云えば、非常に読みやすい。日記である以上当然のことだが、動詞の一人称単数の活用形が頻出するので、それに関する知識さえあれば、初級でも読めるかもしれない。語彙は、ほぼ現代アイルランド語の辞書があれば読めるように思うが、時に現代語ではあまり使わない意味らしき箇所もある。
なお、動詞の一人称単数の特別の活用形は、 『アイルランド語文法 コシュ・アーリゲ方言』(研究社)の第36章などに詳しい解説がある。