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今年中に30枚 (10) Doimnic Mac Giolla Bhride: Saol na Suailce


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 たましいをゆさぶられるアルバム。後世にまで語りつがれるだろうアルバム。

 Doimnic Mac Giolla Bhride: 《Saol na Suailce》 (DMGB 001, 2004)

 目を閉じて聴いていると、ドネゴールの風景が、とりわけ荒涼たる海や山や空の風景が心に浮かぶ。貧しいことが逆説的に強さになるような、そんな胸をしめつけられるような感動を覚える。粗削りの面もあるが、この勇者、ドネゴールの若獅子の実力は隠しようもない。恐らく各誌で絶賛されるだろうが、だれが何を言おうが関係ない。一番ショックを受けているのはアイルランドの若手のアーティストたちだろう。自分たちの原点を掘り起こされたとの思いで奮い立ったのではないかと想像する。これほど強烈なメッセージがアイルランドから発信されるのを聞くのはいったい何年ぶりのことだろうか。

 本アルバムは、最近の優秀な新進アーティストのアルバムのつくりとはまったく違う。名うてのミュージシャンを大勢呼んできて洗練された音づくりを目指す方向とはまったく違うのだ。そういう加糖処理や、化粧はいっさいない。そのための予算もなかったのだろうが、そんなことは問題ではない。

 問題はここに差出された音の中身だ。おれたちはこんな音楽をやる。だれの手も借りない。よかったら聞いてくれ。そんなそっけなさのなかに高潔な心意気を感じる。

 しかし、実際にはアイルランド語放送局やアイルランド語庁(Foras na Gaeilge)など四機関が本アルバムを後援しており、次代をになうこの若者をほうってはおかない。来春の来日が本当に楽しみ。

 たとえて言うと、あしたのジョーに、忘れかけていた真のハングリー精神を想いおこさせる路地裏の眼光鋭い少年みたいなのが、この Doimnic Mac Giolla Bhride なのだ。(← 意味不明)

 彼の歌の世界についてはこのブログでこれまで数え切れないくらい語ってきたので、もうこれ以上は書かない。今は新しい伝説の誕生に静かに乾杯したい。

 おめでとう、a Dhoimnic!

<追記>
 このアルバムはぼくのウェブサイトに載せました。