ラトビア(ラトヴィア、Latvia)東部、民俗音楽の宝庫ラトガレ(Latgale)の女性歌手ビルタ・オゾリニャ(Biruta Ozolina)の一枚目のアルバム(1999)を UPE レーベルからついに入手。UPE はロック・ミュージシャン(Ainars Mielavs)が設立したレーベル。しかし、ロックだけじゃなく、ラトビアのフォークミュージックも丁寧にカヴァーしている。一枚10ドル、送料1.5ドルと格安。
Biruta Ozolina: 《Bolta Eimu》 (UPE CD 013, 1999)
このアルバムでは無伴奏歌唱の絶品トラック13を除き、すべてコクレ(kokle)の弾き語り。コクレはプサルテリウム系統の弦楽器で、ツィターやオートハープに似た響き。彼女のコクレはドナツ・ヴツィンス(Donats Vucins)が製作した約五百台のコクレの一台。
本アルバムで歌われるのはビルタのふるさとラトガレ地方の伝承歌。ラトガレ語(Latgalian)というラトビア語の一方言で歌われているらしい。ラトビアには民俗文化の宝庫が二つあり、一つはクルゼメ(Kurzeme)で、いま一つがこのラトガレ。
ビルタは代々伝承歌を歌う家系の出身で、自身も各地へ出かけて歌を聞取るなどのフィールドワークをしてきたそうだ。が、本アルバムに収められた歌は伝承歌のコレクションとして19世紀に編集された本から採ってあり、歌詞は適宜改変してあるという。
彼女の歌は干し草の山の向こうから響いてきそうな歌声。清涼感あふれるまっすぐな歌声である。自身のコクレスの伴奏のみで歌うという簡素なスタイルながら、表現力はすばらしい。
一つだけ非常に気になる歌がある。トラック9 <Treis mōsenis mežā gōja>(三姉妹は森へ行った)という曲で、一番下の妹が森で迷子になる。そのあとで(?)海辺の漁師に会い、自分の一族は宇宙からやってきたと話すというのだ。歌詞の全体がわからないのでどういう趣旨なのか不明だが、こんなフォークソングは聞いたこともない。ラトビアはほんとにおもしろい。ちなみに、伴奏つきの歌のなかではこの歌はベスト・トラックに挙げてもよいくらいすばらしい。
<ラトビア語表記に関するメモ>
いろいろ試行錯誤した結果、つぎのように判明した。何かの参考に。左側に文字、右側に表記シークェンス(全角)を書く。実際には全角を半角にして書けばよい。
ā ← ā
ō ← ō
ž ← ž
なお、ほかの文字の表記方法については、たとえば HTML Character Entities の頁を参照。
なお、不思議なことにnの下にヒゲがある字(ņ のはず)だけがどうもうまく表示されない。理由は不明。オゾリニャのnの字は本当はこれ。
<追記>
次の日のエントリでは「nの下にヒゲがある字」が時々表示されている。表示されないときには326がキーワードになっているので、「キーワード編集」をしてやれば表示が正常化されるようだ。