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Trad CD Reviews in The Irish Times

アイルランドの日刊紙 The Irish Times はしばしば興味深い記事が載るが、全文を読もうとすると有料購読者のみとなる。ところが、CD レヴューのところは毎週全文が無料で読めるようになっていることを知らなかった。しかも、過去に遡っても読める。
方法は、The Ticket の頁 へ行き、左側から CD Reviews を選ぶ。すると、各ジャンルが出てくるが、そこで TRADITIONALを選ぶと、Siobhán Long によるレヴューが毎週一、二枚分読める。渋いディスクが多く、今週は SEÁN Ó RIADA, CEOLTÓIRÍ CHUALANN & SEÁN Ó SÉ: Ó Riada Sa Gaiety (Gael Linn からの再発盤)だ。
以前のレヴューを読むには、その前の頁に戻り、上のほうの日付脇の矢印をクリックする。一週づつ移動するので、やや面倒だが読める。これまでのレヴュー一覧がどこかにあればよいが、まだ見つけていない。

Catholic 「カトリック」の発音について

最近、TV で「カソリック」という発音をよく聞くが、誤解に基づいていると思われるので、書いておく。
結論から言うと、日本では「カトリック」と言うべきである。(ローマ)カトリック教会を指すつもりであるならば。
1981年にヨハネ・パウロ二世教皇が来日された時に、日本のカトリック教会(窓口は現在のカトリック中央協議会)はマスコミに対して正式に教会用語の表記について通知したが、その際、「カトリック」という表記は自明の前提であったと思う。*1
一般になぜ「カソリック」という発音が流布しており、勝谷誠彦のような尊敬に値する賢明な人物(皮肉はありません)までもがその表記を使っているのかは、理解に苦しむ。恐らく、ある種の英語の発音によっているのだろう。が、英語音によらなければならない必要性も必然性もない。さらに言えば、日本では、「カソリック」という表記は一種の侮蔑的表現ともみなされうる。以下、語源に関わる雑文。


仮に、人々が指しているのがローマ・カトリック教会であるとしよう。イタリア語ではカトリック教徒のことは cattolico カットーリコ、カトリック教会のことは Chiesa cattolica キエーザ・カットーリカである。
ラテン語カトリック教会のことは ecclesia catholicus エックレーシア・カトリクスである。*2 ラテン語の th は、ギリシア語の θ を写すもので、「帯気音」に分類される。t の音を強い呼気とともに発音する。つまり、t + h 「ト」のような音になる。現実には、日本語では t と区別して表記するのが難しいので t のように表記することがよく行われる。theatrum テアートルム(劇場)や thema テマ(テーマ)のように。
catholic (Catholic) の語源は、ギリシア語に遡れば、καθολικοs(カトリコス、「全般的な、普遍的な」)から来ており、その語は κατα(カタ、「〜に関する」)+‘ολοs(ホロス、「全体」) から来ている。ギリシア語でも θ はもちろん帯気音で、t に強い気息を伴わせた「ト」のような発音である。
公の場で発言(発音)する人々にはぜひ考慮していただきたい。

*1:なお、その際通知されたのは「ローマ教皇(きょうこう)」、「ローマ教皇庁(きょうこうちょう)」、「枢機卿(すうききょう)」などの用語の統一であったらしいが、最初の二つは今にいたるまで報道機関はほぼ採用していない。最後の枢機卿は日本のカトリック教会では伝統的には「すうきけい」と言ってきた。

*2:研究社の羅和辞典で ecclesia latina を「ローマン・カソリック教会」と英語式に訳しているのは理解に苦しむ。もちろん、「ローマ・カトリック教会」と書くべきである。