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今年中に30枚 (9) Biruta Ozolina: Sirdsgriezi


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 ラトビア(ラトヴィア、Latvia)東部ラトガレ(Latgale)の女性歌手ビルタ・オゾリニャ(Biruta Ozoliņa)のニ枚目の傑作アルバム(2002)。実はこのアルバムを手に入れるのはずっと念願だった。このほど、UPE レーベルから直に注文でき感無量。

 Biruta Ozoliņa: 《Sirdsgriezi》 (UPE CD 039, 2002)

 美しい美しいアルバム。夏の暑い日にも、これをかければすっと涼しくなるかも。(上記のオゾリニャの綴りに見える「nの下にヒゲがある字」が正しい字です。時々表示されないこともあるようですが。)

 タイトルは Heart Solstice (心の至点、極点)を意味するビルタの造語。

 本アルバムでは、ビルタはコクレはあまり弾かず、もっぱらキーボード(ピアノ、エレピ、シンセ類)を弾いている。ほかにベースとドラムズを従え、まるでピアノ・トリオの趣きだ。

 ともかく、どの歌も美しい。楽器の控えめな響きは歌を浮き彫りにはすれ、みずからは決して目立たない。ときおり、はっとするほど美しい楽器の音が響きわたり、おやっと思うが、次の瞬間、ビルタの歌声がいつ聞こえるか心待ちにしている自分に気づく。そんな展開の55分が、一陣の風のように通り過ぎ、この上ない清涼の美をもたらして終わる。ロバート・ワイアットを女性にしたらこういう世界か、とふと思う。

 逸品。


<追記>

 私が本ブログで取上げた北欧のニ組のアーティスト、Biruta Ozolina (ラトビア)とVintermaneノルウェー)の両方を取上げている珍しいサイトを見つけた。

 そのサイト、The Green Man Review のライターの一人スタイルズ(Mike Stiles)が取上げているのは、次の四組。

Vintermane (ノルウェー
Flukt (ノルウェー
Biruta Ozolina (ラトビア
Alwa (スウェーデン

 これらのうち、日本盤が出ているのは最後の Alwa だけであろうか。北欧音楽を精力的にリリースするノルディックミュージックから 《alwa / alwa アルバ》 のタイトルで出ている。

 たぶん、上の四つのどれか一つが好きであれば他のアーティストも好きである可能性は高い。ただ、Alwa だけはややエッジの立ったロックなどの感覚も含まれるので、あくまで静謐な音楽を求める人には向かないかもしれない。だけど、聞かないには惜しい。Anna Elwing の声は一聴に値する。

 スタイルズがまず書いているところはおもしろい。この四組に共通するのは紙ジャケットだと。これぞプラスティック製品を減らす道と書いている。ぼくの手許には Vintermane と Biruta Ozolina しかないけど、Vintermane のジャケットの質感はすばらしい。かつて自分のウェブサイトでレヴューを書いたことがある。

 スタイルズがジャケットにまず注目するのはわかる。ぼくもプラスティックのCDケースは無機的な感じがして厭で、勿体ないとは思うけど、一枚70円くらいのソフトケースにわざわざ入替えている。あっ、でもビニルも同じ石油製品か。紙のソフトケースってあるのかな。ともかく、元が紙ジャケだと、そのまま使っている。

 Alwa も Flukt も、何でもありの、エネルギーが横溢した北欧音楽。Flukt のほうがやや伝統音楽よりかな。こうして見ると、静謐で清涼感あふれる透明な音楽ということになると、やっぱり Vintermane と Biruta Ozolina かな。

 スタイルズのコメントでおもしろいのは、Vintermane の主要部分をうまく聞き進めるためには絶対に Kenny G を好きになれと書いていることだ。うーん。そんなものかね。あそこまでリズムを単純化しなくてもいいじゃないか。北欧音楽の特徴の一つは微妙なリズムのうねりだとぼくは思ってるので、あまりこの意見には賛成できない。

 ただ、Biruta Ozolina の 《Sirdsgriezi》 をギリシア叙事詩になぞらえているスタイルズの評は一読に値するかもしれない。