Tigh Mhíchíl

詩 音楽 アイルランド

記事一覧

知る人ぞ知る歴史の奇書


[スポンサーリンク]

KAZUKI歴史の時間―時空を超えた暴れん坊 KAZUKI説〈3〉 (時空を超えた暴れん坊KAZUKI説 (3))ジーオー企画出版、2008

KAZUKI『歴史の時間―時空を超えた暴れん坊 KAZUKI説〈3〉 (時空を超えた暴れん坊KAZUKI説 (3))』

KAZUKI説の第3弾。知られざる日本史と世界史を語る。



物語は三人の仲間が大阪府南部のある市に行くところから始まる。そこで、マンション住民らが経験した数々の怪奇現象を調査するうちに、一行のひとり SIZUKU が気を失う。主人公の KAZUKI は SIZUKU を救おうとする。

ところが、SIZUKU を救うためには、信長が出した謎を解かなければならないことが分った。そこで、残された二人 KAZUKI と みぞっち とは、あちこち奔走しつつ、謎解きに挑む。その過程で知られざる日本史や世界史の諸相があぶり出される。



KAZUKI は「天の声」が聞こえる。聞いているあいだ、本人が知るはずもない驚愕の事柄が次々に口をついて出る。それを相棒の みぞっち がメモし、文章にまとめる。そうして出来上がったのが本書というわけだ。



序章以下7章あり、そのうち2〜6章で、歴史好きなら たまらない「真相」が明かされる。知る限りでは類書に殆ど記されていない、本書でしか読めない事柄が多い。次の人物などのいずれかに興味があれば、一読の価値があるかもしれない。

2章の KAZUKI 説は 応神天皇仁徳天皇雄略天皇、仲姫命 を扱う。

3章は ヌエ、明智光秀、天海、坂本龍馬中岡慎太郎、竜宮城。

4章は 卑弥呼武田信玄上杉謙信

5章は 天草四郎、クリスマス、バベルの塔、モーゼの奇跡、ナスカの地上絵、モアイ像、UFO、ネッシージャンヌ・ダルク源義経、チンギスハーン。

6章は 聖徳太子法隆寺かぐや姫宮本武蔵シェイクスピア



上の名前を見ると、有名な歴史上の人物や事柄ばかりだ。これらについてなぜ「天の声」が降りてくるかというと、歴史に間違って記録されたことを訂正し、後世にのこしてほしいという希望があるからだ。KAZUKI はその使命を託されている。



歴史学の立場からはいろいろと突っ込みどころが満載だろうが、定説となっていない部分、資料で裏づけられない部分は、どうしても残るわけで、そのあたりに関心があるひとにとっては、KAZUKI 説は興味深い。

なお、KAZUKI は本書の筆名であり、最近はラジオのパーソナリティやミュージシャンとしては GOD 名で活躍している。



類書にはない本書ならではの事柄を少しだけピックアップしておこう。

卑弥呼の本名は、本書によると、JABARIVI-PAGOS-HIMEKI という。父オンミ (医師) はインドネシア系、母 (武帝の血を引く) はシナ系。このあたりはネットにもたぶん出ていないだろう。

卑弥呼の妹の「壹与」(いよ) は、ある程度、他の資料に出てくる。



評者が一番興味を惹かれたのが、ジャンヌ・ダルクだ。

一般には、ジャンヌがまだ19歳の1431年5月30日に、フランス北部のルーアンで、異端の罪により火刑に処せられたことになっている。この処刑の場面を描いたのがボブ・ディランの 'Changing of the Guards' (1978) であるといわれている。

ところが、本書によると、ジャンヌ・ダルクは処刑されておらず、後のジャンヌ・デ・ザルモアーズ (Jeanne des Armoises) であるという。一般には、その女性は「偽ジャンヌ・ダルク」であるとされる。が、本書によれば、その前に「リス」という変名を使っており、面会した兄のピエールとジャンは、その女性をジャンヌと認めたという。

ジャンヌが助けて王位に就かせたシャルル七世は、処刑に替え玉を使ったのは自分ではないし、リスはジャンヌでないと、最後まで主張したと、本書には書かれている。替え玉工作を認めリスがジャンヌだと認めることは〈男の嫉妬〉(国民の人気が国王である自分より英雄ジャンヌ・ダルクのほうに集まったこと) を認めることになるから、それは出来なかっただろうと思われる。

本書174頁の「一四五二年の夏、初めて ”天の声” を聞いた」は、〈一四二四年〉の誤りだ。



上のジャンヌ・ダルクの話は、KAZUKI天草四郎と話をしているときに出てくる。四郎は、自身の信仰から、KAZUKI に〈主イエス様には奥様やご子息はいらっしゃったのですか〉と訊く。

KAZUKI が天から導き出した答えは

妻子はいたよ。奥さんの名前はマリア。母と同じ名だ。そして、どういうわけかイエスは、わが子にユダという名をつけている。ユダという名には特別な思いがあったようだね。でも、実子のユダは信者にならずに人生を送っている

というもの (148頁)。この「マリア」というのは、「マグダラのマリア」のことだろう。『フィリポによる福音書』には「彼の伴侶と呼ばれていたマグダレーネー」の記述がある。

英訳で引用しておく (Marvin W. Meyer, ed., 'The Nag Hammadi Scriptures', 2007)。

Three women always walked with the master: Mary his mother, sister, and Mary of Magdala, who is called his companion. For "Mary" is the name of his sister, his mother, and his companion.

ここで 'Mary of Magdala, who is called his companion' がそれに当たる。

エスの子については諸説あるが、Simcha Jacobovici と Charles R. Pellegrino とが「ユダ」(英訳 'Judah, son of Jesus') の名を挙げている (TVドキュメンタリ 'The Lost Tomb of Jesus' [2007] および二人の共著 'The Jesus Family Tomb' [2007, 下])[同じトピックを客観的立場から描いた 'Unearthed: The Talpiot Tomb' (2007)というフィルムもある]。その後、その説は聖書学者の James Tabor が支持し、Jacobovici との共著 'The Jesus Discovery' (2012) を著している。