人間は知らないものを見ることはできない

池澤夏樹『静かな大地』(2004) 池澤夏樹の母方の先祖の長大な物語である。 徳島藩の侍に攻めてこられ、淡路島から北海道の静内(しずない)へ新田開拓者として移住する主人公の父の一家。淡路の者は徳島藩の陪臣(家来の家来)であった。淡路の稲田家中が勤王寄りの考えで活動するのを、徳島の蜂須賀家中は苦々しく思っ…