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絵解きは謎解きに通じる━━漢字の絵解きの面白さ


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牧野恭仁雄『みんなで読み解く漢字のなりたち2 人の姿からうまれた漢字 みんなで読み解く漢字のなりたちシリーズ

 

 ふだん使う漢字は300の絵の組合せから成る。そういう観点から漢字を解き明かす「絵解き」はまだ新しい分野だという。

 漢字の成立ちは今の楷書だけ眺めてもわからないし、楷書から理屈を組立てても間違える。

 いい例が「人」という字だ。俗解で人と人とが支えあう字などという。実はもとは一人の絵なのだ。

 つまり、今の楷書の形の漢字だけを見ていては絵解きができないことになる。

 絵に近い、古い字の形を見なければならない。でも、見ても、絵として解けるとはかぎらない。そこに面白さも、またある。まだ確立した分野ではないのだ。そう聞くと、じゃ、自分もひとつ、やってみるかという気がおきてくる。

 この「みんなで読み解く漢字のなりたち」はシリーズになっているが、本書はその第2巻で、「人の姿からうまれた漢字」をあつかう。

 本書の「絵解き」の基本原理が巻末に説明してある。なかなか面白い。

 「主」はもとはかがり火。照明スタンドだ。そこから、「動かない」「まっすぐ」の意味が出てくる。

 左に馬を配すると「駐」の字。もとは「馬をとめる」の意味。いまはもっぱら車をとめることになる。

 にんべんがつくと「住」の字。「人が動かない」意味になる。

 さんずいなら「注」の字。「みずをまっすぐ」という意味だ。

 ごんべんがつくと「註」の字。「〈言う〉が動かない」ことから「書きとめる」意になる。

 きへんなら「柱」の字。「木がまっすぐ」「動かない」という意味だ。

 こうやって見てゆくと、「絵解き」はまことに謎解きに通じることがわかる。本書でも、定説がないケースは、「と思われる」と書いてある(亢、王、皇など)。まだまだ謎が多いのだ。

 意外だったのが「話」の字だ。「内容のある言葉」という意味だという。右側は実は「深く内容のあること」を表す字だ。舌とは違うのだ。見かけは似ているけれど。

 意外といえば「鄰」の字もそうだ。「接しているたくさんの地域」を表す。本来はこの字なのだ。左右をひっくり返した「隣」はおかしな字なのだという。

 「鬼」の字がおもしろい。古い字はやせた幽霊の絵だ。そこから、「あたま」「かたまり」「つかみにくい」を表す。

 「云」という雲を表す字と組合わせると「魂」の字になる。「つかみようがない(精神)」の意味だ。

 「しびれる」ことを表す「麻」と合わせると「魔」の字になる。「幽霊みたいに実体がわからないもの」の意だ。

 もう一つ。「見えにくい」ことを表す「未」と組合わせると「魅」の字になる。「つかみにくく、神秘的である」ことを意味する。

 本書のようなアプローチを、別の角度から漢字の成立ちを考えている笹原宏之のようなやり方と比べてみても、面白いだろう。