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'Cois Abhainn na Séad' の比較


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 Máire Ní Cheocháin のアルバムで挙げた歌 'Cois Abhainn na Séad' は Elizabeth Cronin の録音(1947)もあり、CD 附きの本 The Songs of Elizabeth Cronin (Four Courts Press, 2000) に歌詞と楽譜とが掲載されている(89-90頁)。同 CD と本 CD または上記の1951年の録音とを比べてみるのも興味深い。ショーン・オリーアダはこの曲を分析していてもおかしくなかったくらい、この地域(Baile Mhúirne)の歌の特徴が出ている(飛躍的な旋律が随所にある)。

 このバリヴーニー地域の歌は三人の歌い手が歌い継いできた。

  • Elizabeth Cronin (1879-1956)
  • Máire Ní Cheocháin (1925- )
  • Eilís Ní Shúilleabháin (1943- )

 この三人の録音はすべて手に入るが、それを聞き比べると、いろいろな違いや共通点が見えてくる。この三人の歌い手としての格は無論モーィラがずば抜けており、別格と言える。エリーシュは今や押しも押されもせぬ大御所だけれど、歌い手としてのタイトルはエラハタスでの女性部門の優勝二回というものである。立派な業績であるけれども、同部門は最高競技のオリーアダ杯の登竜門に過ぎない。エリザベスはたぶん何のタイトルも保持していない。マクルームでのフェシュに出たことがあると判っているだけである。

 ショーン・オリーアダの Our Musical Heritage の第一章の分析を踏まえてこのマンスターの歌を聴けば、いかにモーィラの歌がシャン・ノースの一つの極致であるかが判る。いったん、モーィラの技巧の類稀な凄さに気づくと、他の歌もだんだんに真の姿を表してくる。

 クローニンの本の出版は近年のアイルランド伝統音楽界の画期的な出来事であったが、このモーィラの CD の発表はそれに優るとも劣らない慶事である。