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日本料理のことわり(理)をはか(料)る


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北大路魯山人「日本料理の基礎観念」

 

 講習会の記録で、読みやすい。初出は「星岡」第37号(星岡窯研究所、昭和8〔1933〕年12月30日発行)。

 見所は、日本料理のことわりを簡にして要を得たことばで歯に衣着せず語ったところ。食するだけの人にも、もちろん料理する人にも、目から鱗がおちる内容だ。これだけずばりと語ることは、現代でも容易なことではないだろう。

 京都市上賀茂は北大路町に生を受けた魯山人は次のような言葉遣いをする。

こぶを出汁に使う法は、古来、京都で考えられたことです。ご存知のように、京都は千年もつづいた首都でありましたから、北海道で産出されたこぶが、はるかな京都という山の中で、実際上の需要から必要に迫られて、こぶ出汁を取るまでに発達したのでありました。

このような表現にはかちんとくる人もあるかもしれない。しかし、反論は無理だろう。その通りだから。

 読んでよかったし、何度も折にふれて読み返したいと思う名著だ。単に料理のことかと思えば、それにとどまらぬ文化的広がりを感じさせる。基本中の基本を語ることが至難であることを実感させられる稀有な書。

 今から80年前の考え方だから、古臭いと感じる人には合わないかもしれない。だけど、日本料理を根本から振返ってみたい人にはお薦め。