〔蔵出し記事 20060420〕
ヒントは、高田明和さんの本にあった。
浜松医科大学名誉教授の高田さんはテレビの健康番組などでおなじみの人。彼の近著をめくっていたら、突然、医学とは関係なさそうな iPod のことが出てきた。それも、「どのような曲を iPod などに入れたらよいのでしょうか」とある。一歩、踏み込んだ話だ。
これまで、iPod に入れていたのは、原則として、〈いま聞きたい曲〉 が中心だった。多くの人がそうかもしれない。結果、Podcast で仕入れた最新情報入りの番組とか、買ったばかりの CD とか、音楽配信で一分前に手に入れた曲とか、ともかく、まだよく知らない曲を詰め込んでは聴いていた。
ところが、高田さんの勧めはまるで違う。「私は青春時代、あるいは、それより以前に親しんだクラシックの名曲を入れています」と。新しい曲などは、音楽会や自宅のコンポで聴き、「iPod には昔好んだ曲を入れることをお勧めします」と。つまり、そういう自分にとってのオールディーズを聴くことで、その曲を聞いたころの青春時代に思いをはせるのが大事と。そこで、高田さんはこう述べる。
ふーむ。こういう考え方もあると。ところで、iPod では MP3 CBR 320kbps でまあ満足できても、自宅のステレオ・システムで聴くにはやっぱり不満がたまってきた。そこで、FLAC に戻ることにした。ただ、FLAC にすると、一曲あたり 20-30MB くらいのファイルサイズになるから、iPod などに沢山入れたい場合は、MP3 に変換することになる。それで、TPO ごとの音質要求に関しては万全に近いのだが、一つ困ることがある。それは FLAC で落としたものを MP3 に変換すると、曲名以外の情報は抜け落ちることだ。そこで、アーティスト名などをタイプせねばならなくなる。やり方が悪いのかもしれない。Foobar2000 に lame.exe をつかっての変換だけれど。Global Sound などで FLAC を購入すると、MP3 ファイルのほうも、きちんと情報が入っている。
最近の愛聴曲から。モンキーズのカバーと、謎の曲のみ、オールディー ズ。〔謎というのは、ビートルズの〈ビコーズ〉の声だけの録音が入手できたからで、オールディーでありながら初めて聞く音。〕
- 中 孝介: それぞれに
- Luka Bloom: First Light of Spring
- Israel Kamakawiwo'ole: Somewhere Over the Rainbow / What a Wonderful World
- Robert Wyatt: I'm A Believer
- Arvo Pärt: I Am the True Vine
- The Beatles: Because (vocals)
- 岸部 眞明:風、走る
... ar shoilse an lae.
その後、FLAC でぼちぼち入手できた曲で、音質標準とするに足るものとして April Verch の 'Bride of Jesus' (FLAC 783kbps 44100Hz stereo) など、気を注入するのには Värttina の 'Valhe' (FLAC 950kbps 44100Hz stereo) などの収穫があった。いずれも、2006年のアルバムの収録曲。
オールディーズを聴くことが脳にとってどういう影響があるのか。美しいものに触れて喜びを感じ脳が活性化されるとはどういうことか。それは喜びの感情のメカニズムに関係があるらしい。大脳の前頭前野にある眼窩回から中隔核への経路がポイントのひとつ。もうひとつは、頭頂葉の楔前部、また側頭葉嶋前部への刺激。こうした刺激経路が、記憶を維持する能力や、正誤の判別、自己の認識に関係すると高田さんは述べる。興味深い話だ。
いずれにせよ、効果があると感じられるのは、美しい音で心喜ぶ音楽、これに尽きる。オールディーズの原音源が手に入らない場合でも、それを新鮮な感覚の編曲で演奏している場合は、心地よく感じられる。
こういう観点から曲を選ぶとなると、非常にクリアに選曲できる。大体、一枚のアルバムで最高で 4 割くらいしか、そういう部分はない。あとは、今の自分にとっては必要のない音に聞こえる。そうなると、これまで CD というアルバム単位で買わされてきたのは、不要品抱合せのバルク商売にも思えてくる。音楽配信で必要な曲だけを買えるのは、健康な事態かもしれない。高田さんの本のもう一つのテーマは〈掃除〉である(「禅僧は掃除ばかりしている」20頁)。掃除は精神の集中によい。不要品、極論すればゴミは、できるだけ置きたくない。だから、音楽配信はそういう指向にも合っている。
[Värttina, Miero (incl. 'Valhe')]