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古代ローマ萌えの日本女性と奇跡の邂逅をするルシウス


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ヤマザキマリ『テルマエ•ロマエIV』 

 

 古代ローマからときどき現代日本にワープしてきていた浴場技師のルシウスだが、本第4巻では日本に長期滞在するはめに陥り、さらに老舗の温泉旅館で見習いとして働き、現代文明のさまざまな面、中でも電力について原始的な理解をするにいたる。

 ここまでの交流が可能になったのは、ワープしてきた瞬間に出会った小達(おだて)さつきが、ラテン語ペラペラの、古代ローマの専門家だったという事情による。なんともすごい展開だ。おまけに、さつきは才色兼備を絵に描いたような女性で、妻に逃げられた失意のルシウスには胸がときめく相手でもある。

 作中、ラテン語について、次の注記がある。「ラテン語古代ローマ公用語。現在のヨーロッパ諸言語の元になったが、現時点で話せるのはカトリック神職くらい。」(第20話)。確かにそういう面はある。ローマ・カトリック教会の第一公用語は今もラテン語であり、同教会の正式文書はすべてラテン語で書かれている。ただ、話せるのがカトリック聖職者に限られるかというと、そうでもない。その点についてコメントしておきたい。

 現代のヨーロッパにはラテン語で互いにコミュニケーションをとるクラブが存在する。今は各国語に分かれてしまったため意思疎通が困難な人同士でも、その共通の祖先であるラテン語を通じて互いに理解できるという趣旨のもと、連絡や会話がラテン語でなされている。そういう人たちの大会の案内を受取ったことがあるが、確かにすべてラテン語で書かれていた。

 また、イタリアで発行されている新聞では、イタリア語以外に、文中にラテン語が混じることはめずらしくない。特に、Osservatore Romano のような新聞なら日常茶飯事である。教会での説教にも、イタリア語にラテン語が混じるのはごく普通のことである。

 というように、現代のヨーロッパにおいても、ラテン語はある程度「生きた言語」であるというのが実感だ。ぼくでさえ、大学時代、悪友とふざけてラテン語で会話していたこともある。まるで、本作のさつきの高校時代のようで苦笑してしまうが。

 ともあれ、本巻で、ルシウスは現代日本とさらに深い関わりを持つようになり、さらには心の傷をいやすことになるかもしれない、仄かな恋の予感すらでてきた。話はつづく。