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ますます明らかになるイムリの秘密


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三宅乱丈『イムリ 3』エンターブレイン、2008)

 

承前)ふたご星マージとルーンが舞台。マージ星を現在支配している民族カーマと、奴隷となっている民族イコル、さらにカーマの故郷ルーン星の原住民であるイムリ、計三つの民族が登場する。カーマは4000年前の戦争で凍りついた母星ルーンを離れ、隣星マージに移り住んだ。マージ星の呪師候補である主人公デュルクは、研修旅行でルーン星を訪れたおり、軍事系のルーン大大師バニエストクらによるクーデターに巻込まれ、ひとりルーンの辺境をさまようことになる。

 マージ星では、デュルクの母ピアジュが息子の運命を夢で知り、それを呪師衆から隠すため、自らの命を絶った。呪師たちはルーンで何か起こっていると騒然となる。

 一方、デュルクは旅のイムリに助けられ、イムリ大陸の地下にある穴を通って逃亡する。その穴は氷河期の氷が解けてできたもの。デュルクはその冷たい水たまりに過って落ちてしまう。体を暖めるために、石を友達として仲良くする方法をイムリに教わる。それは石の光彩を自分に共鳴させる方法だった。これは応用がきき、たとえば、水を出したいときは土と共鳴させればよい。このようにして、デュルクはイムリの術を少しずつ覚えてゆく。イムリの術は星と仲良くするための術なのだ。その媒介となるのが光彩だ。それに対して、カーマには星があまり力を貸さない。

 ルーン星は今や賢者を始めすべてがバニエストクらの管理下に入る。バニエストクはマージ星の呪師たちに対し、秘密を明かさなければ、人質にとった呪師の家族の命はないと迫る。事態はいよいよ急激に頂点に向かうのか。果たしてルーン星の支配権はどうなるのか。緊迫の場面が展開する。

 本巻では多くの秘密が明かされ、その裏にある民族間の憎悪の歴史もまた明らかになってゆく。SF作品としては珍しいくらい密度の濃い感情がうずまく。