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メタボとは本当に怖いのか


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武田邦彦『「メタボは怖い」は情報操作だった』日本文芸社、2014) [Kindle版]



 刺激的なタイトルの本だ。もし、「メタボは怖い」は情報操作だったとすれば、本当の情報はちがうことになる。さらにいえば、「メタボは怖くない」と示唆しているようでもある。


 急いで説明しておかなければならないのは、著者は工学者であること。本書が問題にするのは、日本の特定健診(「メタボ検診」)の不可解さ、不合理さ(と著者が考えること)についてであること。さらに、本書は、元来は『新聞・テレビは「データ」でウソをつく――政府とメディアのデータ・トリックを見破る方法』(日本文芸社、2013)の第9章を元として電子書籍として分冊化したものであること。したがって、関連する「血圧」などに関しては、元の本にあたるか、同じように分冊化された『「高血圧は長生きできない」という医療のウソ』を読まないとわからない。

 メタボに関しては、特にその定義や診断基準に関して世界的に議論がおこっているが、そういうことは本書では問題にされていない。主に問題にされるのは、腹囲に関する日本の基準値(男性85cm、女性90cm)のことだ。これをもとに、ある一定期間にそれを下げないと自治体や健康保険組合にペナルティをかけるというやり方にひそむ矛盾した論理について問題にしている。

 鷗外と漱石がなぜ60歳以上生きられなかったのかとか、医師の職分とか、平均寿命の問題とか、いろいろと興味深い話題が取上げられている。

 評者が一番おもしろいと思ったのは、「他国より、痩せすぎ女性の多い日本」という文章で、そこに挙げられたデータには驚かされた。そのデータを下に掲げるので、ご関心の向きはご覧いただきたい。「痩せすぎ女性比率の国際比較」というデータで、世界の中の日本女性という観点から見ると興味深いグラフになっている。国際的な標準線が図では黒線でかかれているが、日本だけが別のところにある。つまり、日本は「GDPが3万ドルもあるのに、痩せすぎの女性が15%もいる」という状況がこのデータから読取れる。これは、おおよそ、女性の体は豊かであれば太り、貧乏なら痩せるという国際的傾向に反するデータだ。なぜ、こんなことになったのか。そこから興味深い問題がはじまる。


〔痩せすぎ女性比率の国際比較〕