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電力会社に乗り込む金太郎


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本宮ひろ志サラリーマン金太郎2015 1〜5』(サード・ライン、2015)〔その後、『サラリーマン金太郎 五十歳 1』と改題されて刊行されたようだ〕



サラリーマン金太郎』が4年ぶりに帰ってきた。「2015」をタイトルに冠して。

 いったいどんな話かと思えば「2015」の題に偽りなく、現在ただいまの日本の最重要課題に切込む話である。作中では架空の名前になっているが誰でも何を指しているか分かる。

 結論からいえば痛快きわまりない。閉塞感ただようこの国に、たとえ漫画の中ででも、風穴をあけたいという作者の並々ならぬ意志が伝わってくる。そのためか、この新作の第1〜5話の約120ページ分を電子版として無料公開したのである。これほどの人気漫画シリーズとしては快挙というほかない。

 第1話「金太郎、戻る」で謎のばあさん、中村加代宅に現れた金太郎。就活中の金太郎に対し加代ばあさんが「お前 仕事やる気はあるか」と訊く。十年契約で二百億円出すという。主都電力の経営の主役に就くという話らしい。

 その会社の役員会に乗り込んだ金太郎はこう言ってのける。「いやあ…… 役所以上に役所みたいな会社ってのは本当だな」と。さらに、「総括原価方式」(経費に3%乗せて客から電気代を取る)に対しては、「余計な経費はいっさい省いて電気料金の値を下げるって発想は一度もなかったのかい… 原発を正当化する為に今までどれだけの金を使って来たんだ?」と、鋭く切込む。思わず快哉を叫びたくなる。

 ところが、予想されるとおり、役員会を始め、政府の中枢からも金太郎の役員入りは猛反対される。しかし、金太郎をその役に就けようとする者たちはとんでもない者たちだった。主都電力を、国の顔色を伺う会社から、真に民間企業として生まれ変わらせようとする変革ののろしが上がる。

 同時進行で進む別のプロット、衆議院議員となって早速、与党幹事長を殴り倒す伊達三郎の話とあいまって、事態は風雲急をつげる。まだ矢島金太郎と伊達三郎とは軌跡が交叉しないが、これから、ど派手にからまってくることは必定である。なにしろ、伊達三郎は矢島金太郎を超えるために国会議員になったのだから。目が離せない。ブラボー!