湖の民をめぐる数奇な物語
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万城目学『偉大なる、しゅららぼん』(集英社、2011)
人と水と龍。隠された淡海の歴史。
近畿の水がめ。日本最大の湖。琵琶湖。
料理の仕方によってはシリアスなトーンにもなり得る題材を、ここまでポップに仕立てるのは著者の味というほかない。
著者の長篇小説の中では傑出した力感をそなえた作品ではないか。
閑話休題。2014年春に映画化されるという話を聞いたとき、清子は人間業では演じられないのではないかと、一瞬危惧した。配役をみると、深田恭子だというではないか。えええーっというのが、正直な感想である。「清コング」とか、「グレート清子」の感じと深田恭子と。
トリヴィア的なことを少し。「水平」という言葉が、水に関係していることを、あらためて意識させられた。そう思うと、モーセによる紅海歩行の際の水の様子の意義が深く感ぜられる。ひょっとすると、著者は映画「十戒」を観て参考にしたのではないかな。
もうひとつ。速瀬の飼っている犬の名が「玄三郎」。なんと、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』でのマドレーヌ夫人の夫(犬)と同じ名前。それにどんな意味があるかはわからないけれど。ともかく、確かなのは、『鹿男あをによし』『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』『偉大なる、しゅららぼん』の三作品は関係が不明な見えない糸で結ばれていることだ。
この版に準拠した電子書籍を主として kobo Glo 上で読んだのだけど、何度かデータが飛んでいるように見える箇所に出くわした。iOS 上のリーダだと正常に表示されたので、kobo 端末だけの問題かもしれない。